医療・健康

マクロファージが寒さに応じて褐色脂肪組織から熱を産生する仕組みを解明

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(Image by Shutterstock AI/Shutterstock)
 私たちの身体は寒冷環境下でも体温を維持することができますが、その詳細なメカニズムはよく分かっていません。本研究では、マクロファージという免疫細胞が、寒さに対抗して体温を上昇させるために、褐色脂肪組織での熱産生をコントロールする分子メカニズムを解明しました。

 寒冷環境下での体温維持は生命維持システムとして非常に重要ですが、その詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていません。生体が熱を産生する方法には、骨格筋による震えを介した熱産生と褐色脂肪組織による非震え熱産生の2つの主要な形態があります。特に、長期間の寒冷環境下での適応では、非震え熱産生が重要な役割を担っています。


 今回の研究では、褐色脂肪組織での非震え熱産生における、免疫細胞であるマクロファージ内の転写因子MAFBの機能を解析しました。褐色脂肪組織は寒さに応じて熱を生成し、体温を上昇させる能力を持っており、このプロセスは通常、交感神経系によって制御されています。そこで、Mafb遺伝子欠損マウスを寒冷下で飼育し、体温の変化を観察した結果、Mafb欠損マウスでは褐色脂肪組織の熱産生が減少し、体温が下がることが明らかになりました。また、Mafb欠損マウスの褐色脂肪組織では、野生型と比べて交感神経線維が減少しました。さらに詳細に解析を行ったところ、MAFBが炎症性サイトカインIL-6の発現を抑制して、褐色脂肪組織内の神経成長因子NGFの発現が減少し、交感神経線維の発達障害が引き起こされることが分かりました。これらのことから、褐色脂肪組織の熱産生において、MAFBによる交感神経の密度の制御が重要な役割を担っていることが明らかになりました。


 この研究成果は、体温維持とマクロファージの関係を新たな視点から解明するとともに、寒冷環境下での健康維持や、エネルギー消費を促すことによる肥満治療への応用につながる可能性があります。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
濱田 理人 准教授

掲載論文

【題名】
MAFB in macrophages regulates cold-induced neuronal density in brown adipose tissue
(マクロファージでのMAFBは褐色脂肪組織における寒冷誘導性神経線維密度を制御する)
【掲載誌】
Cell Reports
【DOI】
10.1016/j.celrep.2024.113978

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