医療・健康

音声感情表現の低下からAIでレビー小体型認知症を鑑別するツールを開発

研究イメージ画像
(Image by Robert Kneschke/Shutterstock)
 AIの深層学習モデルを用いた音読中の発話音声データ分析から、レビー小体型認知症者に固有の感情表現の変化を特定し、認知機能の低下や脳領域の萎縮との関連を見いだしました。また、この音声感情表現の変化を利用して、レビー小体型認知症者と他のグループを識別できることを示しました。

 レビー小体型認知症は、アルツハイマー型に次いで2番目に多い神経変性性認知症であり、他の認知症と比較して進行が早く、症状も多岐にわたるため患者のQoL(生活の質)低下が著しいという特徴があります。しかし、アルツハイマー型認知症など他疾患と症状の重複も多く、また、専門医・施設が限られていることから、十分な診断は行われていません。

 認知症者のQoLに関わる症状の一つである感情表現の低下は、日常的なコミュニケーションを妨げ、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼします。しかし、レビー小体型認知症者に関して、感情表現の程度を客観的・定量的に評価した研究はこれまでありませんでした。

 本研究は、レビー小体型認知症者、アルツハイマー型認知症者および認知機能に障害のない高齢者(健常群)から音読中の発話音声データを取得し、AIによる深層学習モデルを用いて、音声に含まれる感情表現の程度を定量的に比較しました。その結果、レビー小体型認知症群では、アルツハイマー型認知症群および健常群と比較し、よりネガティブで、より落ち着いた方向へ感情表現が変化し、全体的な表現性も減少することを発見しました。また、その減少の程度は、認知機能の低下、およびレビー小体型認知症者で典型的に萎縮する脳領域の一つである島皮質の萎縮と関連していました。さらに、AIによる音声感情表現の変化の自動分析から、レビー小体型認知症者と他のグループを識別可能であることを示しました。

 本技術は、レビー小体型認知症の早期発見および早期ケアの一助となると期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
新井 哲明 教授

掲載論文

【題名】
Vocal expression of emotions discriminates dementia with Lewy bodies from Alzheimer's disease
(音声感情表現にもとづくレビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の鑑別)
【掲載誌】
Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring
【DOI】
10.1002/dad2.12594

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