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お知らせ・情報

新たな筑波大学像を目指して

2010/04/01山田信博学長メッセージ

 第二期中期目標・計画実施の最初の年が始まります。
 昨年度は,第一期中期目標・計画のとりまとめと,第二期中期目標・計画の策定が重なり,教職員の皆さんには多大なるご尽力をいただき,心より感謝申し上げます。
 法人化後には,法人制度自体に伴う種々の問題に加えて,総人件費抑制方針や運営費交付金削減方針などの法人制度に関連した財政的な制約もありながら,本学は着実に帆路をすすんできたと考えています。それを土台に,本学自身が望むこれからの道を,自由闊達に歩いていくために,またその先にある豊かな将来像を築いていくために必要だと考えているポイントを述べたいと思います。

「新構想大学」から「未来構想大学」へ
 私たちは,本学が前身校の歴史と伝統の上に,「新しい構想に基づく大学」として設立された経緯をよく知っています。開学の理念にあるように,本学はあらゆる面で「開かれた大学」として,当時から先進的かつ先導的な改革を進めてきました。研究教育の学際的な展開をはじめ,中央教育審議会の答申により活発に議論されるようになった「学位プログラム」の考え方の原点とも言える教育システムの実施,積極的な留学生受け入れや先駆的な海外拠点の形成などに代表される国際性の重視,教員組織を学系と呼ぶ組織運営の革新などです。このような新しい仕組みにより,我が国の大学の在り方を先導してきた事実は自負できることです。
 しかし,さらに重要なことは,新しいことに挑戦し,新しい領域を開拓する努力を間断なく続けていくということです。 University とは,本来,個々の学問領域の成熟を基盤に,異なる分野を融合して新たな学問分野を創成する場所であり,この概念はまさに本学の理念そのものです。未来に向けて,これまでにない新たな研究教育分野の創成は本学の活力となるはずです。生命進化のモティベーションの一つは,種々の要因による遺伝子の変異です。未来の新たな生命を生み出すための変異です。変化や改革,それに続く再生は,時代のキーワードとなっていますが,改革と挑戦のための種々の方策を支える根源は,私たち自身の意識改革にあります。そのような認識のもとに,政策的な意味合いもあった「新構想大学」というフレーズから発展し,未来に向けて革新的な挑戦を不断に続ける「未来構想大学」を目指したいと思います。

未来を創造するために
 これらを強く意識しながら,大学としては,世界的研究・教育拠点形成を前文に掲げた第二期中期目標に沿った計画を実践・実現していきます。特に以下に述べるような戦略的な課題には重点的に取組んでいきたいと考えています。その際に,昨年末の仕分け作業で浮かび上がってきた重要な教訓である教育研究に携わる教職員のみならず,教育研究組織や大学そのものの活動を社会から「見える」ようにする必要があります。学生の視点を強化すべきですし,社会への働きかけも重要な課題です。そして,大学の「見える化」を,社会への説明責任と捉えるだけでなく,ブランディングの一環として考えることもできると思います。

●教育・学生支援
 大学の基本的な使命である教育についてですが,最も重要なことは,学生に真の人間力を身につけさせることであると考えています。教育の実質化についても,このような視点から推し進めることが重要です。この点では,すでに多くの努力が始められていますが,さらに教育サービスを受けようとする者への「見える化」をすすめなければなりません。つまり,「見える化」に足る内容を整備する必要があります。「学位プログラム」に基づく教育体制ということが喧伝されています。この考え方は,本学の本来の考え方と重なる部分が多いものです。多様化する教育ニーズに対応するためにも,また本学の得意とする学際・融合分野の開発・推進のためにも,この考え方をよく咀嚼して,効果ある実践を目指していきたいと考えています。本年度からは,教育イニシアティブ機構を立ち上げ,教育における新しい試みを支援いたします。「見える化」,「学位プログラム」という視点を考慮して,学位授与方針や教育課程編成・実施の方針及び入学者選抜方針といった質保証に関わる施策に取組みながら,学士課程の教育宣言である「筑波スタンダード」の改訂版に加えて,大学院版を策定することも重要な課題です。大学院においては,高度な教育に加えて,それを受ける大学院生にふさわしい幅広い教育も必要であると考えています。これに関連して,大学院教育における大切な課題の一つは、専門(職)学位と研究学位との違いを意識することではないかと考えています。もう一つの重要な課題は,研究大学としての位置づけを持ち,国立大学法人である本学においては,修士/博士前期課程から後期課程への進学率を上昇させることです。
 学生支援の観点からは,経済的支援,生活環境の改善,特に学生宿舎を含むアメニティーの充実は大変に重要な課題です。留学生を主な対象にした「つくばスカラシップ」を創設いたしましたが,経済的支援のための方策はまだまだ十分とは言えませんので,さらに具体策を講じる必要があると考えています。安定な財源確保のための基金活動である TSUKUBA FUTURESHIP が本年度より始まります。市民に開かれた大学としてアメニティー整備を含むキャンパスのリニューアルについても考えたいと思っています。また,学生のみならず教職員の心身のケアについては,なお一層のシステム作りが重要だと考えています。

●研究
 最良の教育を提供するためには,高いレベルの研究が必須です。多様な研究分野を持つ本学にあっては,すべての研究分野においてその研究水準の向上が望まれるのみならず,特徴のある,あるいは他には類を見ない研究分野においては,世界最先端レベルを目指した研究水準の向上が肝要です。これらの支援のみならず,学際融合的な研究分野の強化,および萌芽研究の支援を目指して,研究戦略イニシアティブ推進機構を刷新しました。一方では,先進的で,新奇性の高い学際横断的な研究分野の創出が容易となる組織運営体制についても考える必要があります。加えて,講座制を持たない本学組織体制においては,個々の研究グループについては,個々の独自性に適合する支援が必要であると同時に,いくつかの研究グループがまとまって力を発揮できるシステム作りも重要な課題です。研究センターのあり方も含めて,工夫が必要だと考えています。
 また,研究推進には産官との協力も必要ですし,研究成果を社会に発信するのみならず,社会に還元することを推奨します。本学が中核となって,外部研究機関等との連携をさらに深めるとともに,広く産学研究を先導し,産学協業の支援を行うことのできる産学連携コアを作り上げる準備を始めます。

●社会との連携
 国際社会との連携については,G30拠点として,さらに戦略的に前進したいと思います。グローバル化が進む世界情勢の中で,国際社会を相対化するのではなく,私たちは多様な国家が存在する地球の一員であるということを強く認識することが基盤です。私たちはまた,研究教育活動を通じて,地球規模の課題について意見を述べ,解決策を目指して貢献していきたいと思います。その上で,地球規模ステージで活躍できる人材を育成します。G30プログラムに採択されたことは,皆さんの努力の賜物であり,大きな誇りでもあり,本学の地球戦略をすすめる重要なステップストーンです。予算規模の縮小を余儀なくされましたが,皆さんのご協力をお願いするところです。海外拠点形成も順調に進んでいますし,海外の教育研究組織との連携協定も増えています。これらの拠点や提携組織との協働活動の実質化を今年度の柱の一つと考えています。学生,教職員の海外での活動も一段と活発化させていきたいと考えています。
 関連して,本学が活動するつくば市のグローバル化にも協力していきたいと考えています。昨年,自治体を中心にまとめられた新たなつくばのグランドデザインには,学園都市と銘うちながら,教育機関の視点が不十分のように思います。本学の外国人を含む学生,教職員,およびそれらの家族は,つくばの街作りにおいても,街の重要な構成員です。大学は,魅力ある街の形成と発展において,文化基盤を支え,創造する中心的な存在の一つであるはずです。現在,本学の理念と活動に賛同する市民や団体(産官の研究組織なども含む)とゆるやかな連携を築き,本学が主導する街での教養・文化活動,地域とともに行う研究・教育活動等に各々に参画いただき,筑波大学を中心とした文化圏の構築を目指した仕組みを考えているところです(グランド筑波大学構想-筑波大学アソシエート制度)。関連して,在学生及び卒業生・修了生の支援とこれらを中心としたネットワークの充実は,国際的に開かれた教育,および高い水準の研究とともに,大学の「見える化」をすすめ,大学の社会評価を高める重要なポイントです。統合的なネットワークの創設に向けて,準備をすすめているところです。

●運営
 先に述べたように,法人化に前後してもたらされた財政的な課題は,本学にとっても大きな問題です。この点については,国立大学協会などの活動を通じて,他の大学とも連携して対処していきます。そういった状況の中で,今年度の特別経費の大幅な増加は教職員の協働作業の賜物と考えており,深く感謝しているところです。さらに,競争的外部資金の獲得を目指すためには,個々の教員のなお一層の努力に加えて,組織的な体制作りが必要です。個性的な,また将来性豊かな個人研究,若手や新たな研究に挑む研究者を支援します。一方で,個人レベルだけではなく,一定の大きさと強さを持ち,迅速な対応のできるグループ(あるいは組織)を普段から形成していくシステムも重要だと考えています。
 これまでに述べてきたような教育の向上,研究の推進,国際活動の実質化,それらを進めるための基盤の一つとなる教育研究経費の獲得増加などを改善するにあたり,本学の組織運営の方法について,よく議論し,改善すべき点は改善する必要があります。「学位プログラム」の考え方を進める立場も加味して,運営方法の改善方策を皆さんとともに見いだして行こうと考えています。大学の持つリソースの配分を考える時,教員単位ではなく,組織単位で考えていく必要があります。最も効果的で公平な評価を行うためには,評価対象のグループも含めて今後さらに議論する必要があります。総人件費抑制政策がすすむ中では,教職員の雇用と配置についても新たな方策が必要です。総人件費による人事管理制度などは有力な考え方ですが,どのようなグループで管理するかなどについて意見交換を進めたいと考えています。学生,教職員の提案に迅速に対応できるような事務組織体制への改革もさらに進めなければなりません。加えて,人的・物的資源活用の最適化と教職員のキャリア支援を進めることのできる体制作りに腐心します。
 教員業績評価に際して,多くの要望を頂きました。特に,全学あるいは各部局での会議や委員会などが多く,本来業務である研究・教育に集中しにくい環境があり,これを是正すべきとの多くのご意見が寄せられました。すでに全学における委員会の見直しを進め,委員会での情報が全学に周知できるように工夫を始めていますが,全学,各部局ともにさらに努力を重ねていくべき課題と考えます。

IMAGINE THE FUTURE.
 私たちは,本学の持てるあらゆる力と潜在力を活用して,未来の地球のあり方に貢献したいと思います。私は,研究教育現場の声を直に聞き,皆さんとの対話をさらにすすめることを心がけ,学生,教員,職員の活動がより高いレベルでスムースにすすむように努力いたします。各グループでは,各グループと大学全般に亘る運営に関する教職員の意見を細大漏らさず聴取し,時にはコンセンサスに集約することができるように,またスピーディーに問題の解決に至れるように,さらに運営体制の効率化と実質化をお願いするところです。私たちは自らの意識改革に努め,開かれた未来へ,共に歩みたいと思います。

IMAGINE THE FUTURE.

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