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ガラスの“家を建てる”アメーバ

2014/03/06

 アメーバというと、“下等”な生きものの代名詞のようなイメージがあります。しかしこのたび確認された行動を見れば、そんなイメージが払拭されること必至です。
 驚きの行動が確認されたのは、世界中の温帯の池などに広く分布するポーリネラ・クロマトフォラ(Paulinella chromatophora、以下“ポーリネラ”)というアメーバです。

  • ポーリネラの光学顕微鏡写真:透明な殻の中にアメーバ状細胞が入っている様子。緑色のものは有色体と呼ばれる光合成をする細胞小器官。

    ポーリネラの光学顕微鏡写真:透明な殻の中にアメーバ状細胞が入っている様子。緑色のものは有色体と呼ばれる光合成をする細胞小器官。

  • ポーリネラの殻の走査型電子顕微鏡写真:多数の鱗片が組み合わさってできている。鱗片の大きさがそれぞれ違うことがわかる。上部の鱗片には小突起が見られるが,中間~下部の鱗片にはそれらは見られない。

    小突起が見られるが,中間~下部の鱗片にはそれらは見られない。



 このアメーバは、ガラス質の殻で覆われていることから有殻アメーバとも呼ばれています。ポーリネラの殻は、それぞれ大きさや形状が少しずつ異なるおよそ50枚のガラス質(珪酸質)の鱗片で構成されています。その鱗片を、順序よく積み上げて新しい殻を正確に構築した上で細胞分裂し、娘細胞が新しい殻で独立生活を始めることが、このたび確認されました。


ポーリネラが分裂に際して新しい殻を作ることは、以前から知られていました。しかし、その詳細は不明でした。今回の観察が成功したのは、筑波大学生命環境系の石田健一郎教授と大学院生の野村真未さんらの研究グループが、つくば市内のため池で採集したポーリネラを基に、安定して培養できる株を作成し、継続観察が可能になったことによります。


顕微鏡下でコマ撮り撮影されたビデオには、分裂を控えたポーリネラが、1本の太い仮足を伸ばし、まるでタイル屋さんのように、鱗片を1枚ずつ内側から貼り付けてゆく光景が捉えられていました。ポーリネラは、細い糸上の仮足を出して移動します。しかし、殻の構築作業に用いる仮足は、この作業のためだけのものでした。いったいどうやって殻の形状を正確に再構築してゆくのか、今後の研究が待たれます。

  • 細胞分裂後に娘細胞の一つが新しく構築された殻に移動していく様子。

    細胞分裂後に娘細胞の一つが新しく構築された殻に移動していく様子。

  • ポーリネラの殻構築過程:1本の太い仮足が、鱗片を1枚ずつ積み上げながら殻を構築していく。

    ポーリネラの殻構築過程:1本の太い仮足が、鱗片を1枚ずつ積み上げながら殻を構築していく。

 

 

掲載論文

【掲載誌】Journal of Eukaryotic Microbiology
【タイトル】Detailed Process of Shell Construction in the Photosynthetic Testate Amoeba Paulinella chromatophora(Euglyphid, Rhizaria)
(和訳)
光合成性有殻アメーバPaulinella chromatophora(ユーグリファ目、リザリア)における殻構築過程の詳細
【著者名】Mami Nomura(野村真未:筑波大学大学院生命環境科学研究科 博士後期課程2年)
Takuro Nakayama(中山卓郎:筑波大学計算科学研究センター 研究員)
Ken-ichiro Ishida(石田健一郎:筑波大学生命環境系 教授)

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