医療・健康

発育期の野球選手における腰椎分離症の発生部位の偏りを解明

研究イメージ画像
(Image by mTaira/Shutterstock)
発育期の野球選手における腰椎分離症の発生部位の左右差を投手と野手に分けて調査したところ、投手では投球する側とは反対側でより頻繁に腰椎分離症が発生することを見いだしました。一方、野手においては、投球側・打撃側ともに腰椎分離症の発生部位に左右の偏りがないことが明らかになりました。

腰椎分離症は腰の背骨の疲労骨折で、発育期の代表的なスポーツ障害の一つです。ひとたび発生すると慢性的な腰痛の原因となり、治療中はすべてのスポーツ活動を休止する必要があるため、発生予防と早期発見が重要とされています。野球のように片方のみに腰をひねるスポーツでは、左右どちらか一方の腰椎分離症が多いことが知られていましたが、投球側(右投げか左投げか)や打撃側(右打ちから左打ちか)との関連や投手と野手の間での違いは解明されていませんでした。


本研究では、発育期の野球選手において腰椎分離症が発生する部位を投手と野手に分けて調査しました。その結果、投手では投球側とは反対側の部位でより頻繁に発生することを見いだしました。一方野手においては、投球側でも打撃側でも分離症の発生部位に左右の偏りがないことが明らかになりました。投球時には腰のひねりとそらしが同時に起こります。このため、野手よりも投手の方が、投球側と反対側の腰椎に繰り返し負担がかかっていることを今回の結果は示しています。


本研究グループではこれまで、腰椎分離症を正しく診断するための画像検査の精度、装具を用いた治療の奏功率(手術をしないでも骨が癒合する率)、装具を用いた治療が奏功しない症例の要因、新しい手術方法の開発とその成績など、多くの知見を明らかにしてきました。今回の成果は、これらの研究に組み入れられた症例のうち野球選手に焦点を当てたことによるものです。


本研究で得られた新しい知見を、選手に加え、指導者や保護者など発育期のスポーツ現場を支える多くの人々に広く普及させていくことで、将来的な障害予防につながることが期待されます。

PDF資料

プレスリリース

研究代表者

総合病院水戸協同病院
辰村 正紀 整形外科部長
(研究当時:筑波大学医学医療系/筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター 准教授)

人間総合科学学術院 医学学位プログラム
照屋 翔太郎

掲載論文

【題名】
Characteristics of Lumbar Spondylolysis in Adolescent Baseball Players: Relationship between the Laterality of Lumbar Spondylolysis and the Throwing or Batting Side.
(発育期の野球選手に生じた腰椎分離症の発生側と投球側・打撃側の違いによる関係性)
【掲載誌】
Asian Spine Journal
【DOI】
10.31616/asj.2023.0360

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