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在学生の方へ

    

 

「もっと研究ができる、より専門的なことが学べる・・・」

 

学群の4年間だけではできなかったことに取り組める大学院。

 

学生や社会のニーズに合わせて、大学院もさまざまな試みを始めている。

 
(安中裕大、高須賀真之、竹生悠夏、 富永しおり、若梅一真)
   

筑波大の大学院

 

筑波大学大学院には、8の研究科と87の専攻があり、さまざまな分野を研究している。修士課程と博士課程合わせて計6353人(08年8月1日現在)の学生が所属している。

 

修了までの課程は、大きく分けて修士課程と博士課程、社会人を対象とした専門職学位課程がある。修士課程と博士前期課程は修士、一貫制博士課程と博士後期課程では博士の学位が与えられる。専門職学位課程は、高度な職業性の育成を重視した課程で、修了時には専門職の学位が得られる。

   

大学院研究科一覧

出典

(研究科の編成は08年度時点のもの)

人文社会科学研究科

人文・文化学群、社会・国際学群の分野をより高度、専門的に研究する。歴史・人類学、経済学などの専攻がある。

教育研究科

教育や福祉に精通し、優れた指導力を持つ人材の養成を目指す。教科教育、スクールリーダーシップ開発などの専攻がある。

システム情報工学研究科

従来の社会工学の枠を越え、幅広い分野を統合し研究する。社会システム工学、コンピュータサイエンスなどの専攻がある

数理物質科学研究科

科学への幅広い視野を持ち、現代の急激な社会変化に対応する秀でた人材を養成する。化学、電子・物理工学などの専攻がある。

ビジネス科学研究科

すべての専攻が東京キャンパスにあり、社会人を対象としている。企業、経営に関する専攻のほか、法科大学院も設けられている。

図書館情報メディア研究科

情報社会を支え、発展させる人材の養成を目指す。専攻は図書館情報メディアのみ。

生命環境科学研究科

生命環境学群の分野を総合的に研究し、現代の環境問題にグローバルな視点で対処できる人材を養成する。生物科学、持続環境学などの専攻がある。

人間総合科学研究科

「人間」の追究を大きな目標に掲げる。専攻も、人間学群、医学群、体育専門学群、芸術専門学群の分野を含み、バリエーションに富む。

   

一般入試と推薦入試

 

筑波大学の大学院入試は、一般入試と推薦入試の二つに大別される。一般入試は研究科・専攻によって異なるが、8月・10月および2月に実施され、外国語と専門分野の学科試験および口述試験が課される。推薦入試は毎年7月に行われ、小論文と面接で合否が決まる。推薦・8月および10月の試験で募集人数に満たない場合は、第2次募集が2月に行われる。

 

推薦入試のような入試制度を特別選抜と呼ぶ。受験者の事情に応じて選抜する制度で、社会人を受け入れるための社会人特別入試もこれに含まれる。

 

社会人に対して筑波大学大学院は次のような制度を設け、学位を取得しやすくしている。制度によっては、条件を満たすことで一般の学生でも利用できるものもある。

学類・専門学群別大学院進学率
学類・専門学群別大学院進学率グラフ

注:(医学類は6年制のため、情報メディア創成学類は新設のため該当データなし)

出典
   

1年で博士号を取得

 

早期修了プログラムは、通常は3年かかる博士後期課程を最短1年で修了できる制度だ。主に社会人が対象だが、学生でも相当の条件を満たすことにより、大学院入学時に審査を受け、履修が認められることがある。本制度は、ビジネス科学研究科、数理物質科学研究科、システム情報工学研究科、生命環境科学研究科の4つの研究科で実施されている。なお、入学時の審査に落ちた場合でも、在学中に優れた研究成果を上げることで、3年未満で修了できることもある。

 

早期修了プログラムの問題点は、学位の質が低下する恐れがあること。この問題を防ぐために、二つの方法で履修者とプログラム自体の評価をしている。一つは履修者は達成度評価システムにより、専門基礎や国際的通用性など8項目の達成度を教員と履修者自身により確認すること。もう一つはプログラムが正しく機能しているかどうか、外部評価委員会を置いて第三者の視点から判断すること。

 

筑波大学大学院は社会の変化に合わせて、組織形態が何度も変わってきた。大学院の規模は拡大し、各研究科が実施しているプログラムにも独自の特色が現れた。具体的な取り組みとして2つの研究科を取り上げる。

   

幅広い領域の統合

坪井美樹・人文社会科学研究科長
 

人文社会科学研究科は、01年に人文科学系と社会科学系の研究科を統合し、08年4月に専攻の新設を経て現在の形になった。総合研究科として幅広い分野を統合し、一つの領域にとらわれない柔軟な研究ができる。

 

専攻だけでなく教育課程も再編された。5年一貫制の博士課程に統一されていたすべての専攻が、学生へのアンケートをもとに、専攻ごとに区分制と一貫制に分けた。「学生がニーズに合わせて選びやすくなった」と坪井美樹・人文社会科学研究科長は言う。

 

同研究科は地域研究研究科と共同して、07年から人社系異分野融合型教育を実施している。両研究科17名の学生が第一期プログラム生に選ばれた。08年の改組で地域研究研究科は人文社会科学研究科の国際地域研究専攻となったが、プログラムは現在も続いている。「学生からは好評で、非常に有意義な試みだった。プログラムは3年間で終わるが、今後も続けていきたい」

   

周辺の研究所と協力

赤平昌文・数理物質科学研究科長
 

数理物質科学研究科は00年に理学と工学の融合を目指して、数学研究科や物理学研究科などが統合されてできた。

 

同研究科は異なる専攻同士で連携することで、より高度な研究を試みている。現在は統合後の過渡期を経たところでまだ十分とは言えないが、今後は合同セミナーなどを通して結びつきを強めていく。「研究室単位での連携を目指す。実際に人と人が触れ合わない限り、本当の融合は成しえない」と赤平昌文・数理物質科学研究科長は言う。

 

研究科内だけでなく研究機関との交流も盛んだ。同研究科では合同ゼミやインターン形式での共同研究などにより、大学だけでは難しい発展的な研究を可能にしている。連携大学院方式も採用しており、学生は学外の研究室で研究し、学位を取得できる。「企業での研究は、社会ですぐに役に立つものが多い。大学では学びにくい分野にも触れられる」

   

進学者の減少は、文理共通の悩み

 

人文社会科学、数理物質科学の両研究科では、進学者の減少が悩みの種だ。

 

数理物質科学研究科では、修士課程から博士課程への進学率が2割程度。学生への経済的な負担が大きいことや、財政支援が不十分なことも原因と考えられている。「今後は、TAやRAの予算を増やすなどして解決していく」と赤平研究科長はi言う。

 

人文社会科学研究科では、筑波大学からの内部進学者数が、入学者の半数に満たない。学群生の4年間で十分と感じる人が多いことや、課程修了後の就職率の悪さが原因だという。「修了生の高い専門性を、いかに企業に周知するかが課題。学生の努力に見合う出口を作っていきたい」と坪井研究科長は話す。

 

各研究科ごとにさまざまな取り組みをしている大学院。そこで学ぶ学生はどのような生活を送っているのだろうか。

   

大学院生の生活

 

横山実有寿さん(地域研究研究科2年)は、日本研究コースで民俗学を専攻している。「平日の授業以外に、学生主催のゼミを月に2、3回の頻度で行った。学生だけのゼミなので率直な意見交換ができた」と横山さんは話す。発表や考えるスキルが身につき、修士論文も早い時期から意識できたという。

 

「自分のできることが広がり自信がついた」と中田文也さん(数理物質科学研究科2年)は研究生活を振り返る。専門知識だけでなく、発表の技術やパソコンのプログラミングなど、社会で役立つことも多く得られた。1年生のときは平均1日2コマの授業の合間に実験を行い忙しかったが、2年生になってからはゆとりもでき、週に1回家庭教師のアルバイトもしていた。

   

大学院入試に向けて

 

大学院入試で、横山さんは英語と専門科目、面接試験を受けた。英語は課程によって内容が異なる。専門科目はさまざまなテーマから2問を選ぶ形式のため、幅広い知識が求められた。「学群生の間にどの授業でも関心を持って取り組み、できるだけ多くのことを吸収すること」と横山さんは話す。

 

中田さんが大学院への進学を決めたのは学群3年生の時。大学を卒業しただけでは、就職先が限られてしまうと感じたからだ。1日目に学科試験、2日目に面接を受けた。「試験の2週間前まで卒業研究の実験があり大変だったが、一緒に試験を受ける友達がいたので楽しかった」と中田さんは話す。

   

院生の就職活動

 

横山さんは就職活動を1年生の10月に始め、翌年の5月に内定が決まった。レポートや研究に追われる中で、つくばを離れることが多く両立に苦労したと言う。「就職試験を受ける時は、自分がどうして大学院に進学したのかを明確にし、外に目をむけて十分に情報収集を行うことが大切」

 

中田さんは秋の学会が終わるとすぐに就職活動を始め、1年生の10月には会社説明会に参加した。2月に、自分の専門知識を活かせる医療材料の企業を受けた。3月に最終面接を受け、同月に内定が決まったという。「企業の規模や業務内容の下調べはもちろん、雰囲気を肌で感じることも大事。自分のやりたいことは時間をかけて探すべき」と中田さんは言う。 学群生は大学に通う4年間に、進学と就職の選択を迫られる。何が選ぶ決め手となるのだろうか。

   

進学か就職か

 

周囲の友人に合わせて、「なんとなく」進路を決めてしまう学生もいるという。学生のモラトリアムについて坪井研究科長は次のように話す。「進路が決められない人は自分の外に面白さを求めがち。周りに流されず、自分が本当に面白いと感じられることを探してほしい」

   

コラム|連携を重視する大学院

   

人社系異分野融合型教育|専攻間の連携

 

人文社会科学研究科と地域研究研究科(現・国際地域研究専攻)は共同で、07年から人社系異分野融合型教育を実施している。

 

一人の教授に複数の学生が師事する従来の講座制とは違い、この制度ではプログラム生の研究内容に合わせて、専門分野の異なる複数の教員による指導が受けられる。文部科学省の「大学教育改革支援プログラム」として3年間の財政支援も受けており、他大学の教授や海外の研究者や海外調査から最新の知識を得られる。

 

複数の教員に指導されるため、人によっては研究の方向性を見失うこともある。プログラムの参加には、自分の進路を貫く強い意志が必要だ。自由な研究を目標としているが、大学設置基準による制約で他大学の学位が取得できないなど限界もある。

   

連携大学院|企業との連携

 

連携大学院とは、大学と研究機関が協力し、発展的な研究を行う制度。92年に始まり、現在は産業技術総合研究所をはじめ、つくば市にある24の研究機関と提携している。最新の設備で、最先端の研究を行っているこれら研究機関は、基礎分野の研究に終始しがちな大学にとって魅力的と言える。

 

連携は二通りで、研究機関の研究員に教授、准教授として研究室を受け持ってもらう第一号連携と、専攻全体の運営を任せる第二号連携がある。

 

連携大学院の問題は、研究機関の連携教員がほかの機関などに異動した場合、学生が学位論文を完成するまでは移動先において引き続き指導してもらう必要があるなど、制度の安定性が保ちづらいと、学務部教育企画課の担当者は話す。

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