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在学生の方へ

    

 

09年9月17日、共通科目「英語」のカリキュラム改革案が教育研究評議会で承認された。筑波大学英語検定試験(筑波英検)の廃止や、専門の英語への橋渡し科目の導入などを盛り込んだ英語の新カリキュラムが、11年度から導入される。

 

改革案は、教養教育機構の外国語教育専門委員会が中心となり、08年10月から検討されてきた。73年の開学以来、筑波大学の英語カリキュラムは変わっていない。38年目の大改革はどうなるのか。

 
(浅野マミ、安中裕大、田中菜津美、張文禎、平林知芙美、松井隼人)
   

改革の主な柱

  • 1年次の必修科目を「英語基礎」「異文化と英語」「総合英語」に改定
  • 一般学術目的の英語から特定学術目的の英語への橋渡し科目の導入
  • 筑波大学英語検定試験の廃止
   

理念は「筑波大らしさ」

学術研究の場に耐えうる英語力を

島田雅晴英語セクション代表
 

現行の英語カリキュラムは学生にどのような英語力を身に付けさせるかが明確ではなく、同じ科目でも担当教員によって内容が異なることがあった。改革後は理念を明確に定め、教員間の授業内容のばらつきを最小限に抑える。

 

理念として掲げられたのは「学術的教養及び学術的言語技能の涵養(かんよう)」。学術研究の場としての筑波大学にふさわしい英語教育を行う。「中学高校の英語教育の延長ではなく、専門教育への出発点としての英語教育を行うことを意図している」と外国語教育専門委員会の山田宣夫委員長(人文・文化学群長)は熱意を語る。

 

重要なのは理念に沿った授業の実施だ。現行の「英語Ⅰ」「英語Ⅱ」「英語Ⅲ」という区分は、授業内容がわかりにくかった。「コミュニケーションを教えるとしても、日常会話の英語か学術的な英語か先生によってまちまちだった」と新カリキュラムの作成に携わった島田雅晴・外国語センター英語セクション代表は話す。

 

改革後は理念に合わせて、「英語基礎」「異文化と英語」「総合英語」の3科目が1年次の必修科目となる。「英語基礎」では英文の講読を通して考える力を、「異文化と英語」では異文化への理解力を身に付ける。「総合英語」ではCALL教室を利用して学問に必要なスキルを養う。「改革後は、学術研究の場に耐えうる英語力を培うように教員の足並みをそろえる」と島田英語セクション代表は説明する。

   

筑波英検は廃止

専門教育への出発点を目指す

外国語教育専門委員会山田宣夫委員長
 

筑波英検が廃止され、授業ごとに成績が評価されるようになる。「筑波英検はTOEICやTOEFLのようには社会で認知されていない。学生の英語力を保証できているか疑問視する声も挙がっていた」と山田委員長は廃止の理由を語る。

 

新カリキュラムでは、筑波英検の代わりに各授業の質を向上させて学生の英語力を保証する。教員の教育能力を高めるためのファカルティ・ディベロップメント(FD)に力を入れる。学生による授業評価アンケートの実施やFD研修会の開催、卒業生への授業評価アンケートなどを行い授業の改善に役立てる。

   

目的ある英語学習へ

国際社会で活躍できる人材へ

清水一彦副学長(教育)
 

以前から学生や教員の間で、現行のカリキュラムでは英語力が必ずしも向上しないのではないかという懸念があった。

 

全代会・教育環境委員会(教育委)でも問題視しており、09年2月に「英語教育に関する意識調査」を行った。総合科目Aの担当教員に協力を依頼し、433人の学生から回答を得た。「筑波大学の学習であなたの英語能力が向上したと思いますか」という質問に対し、約6割の学生が「思わない」と答えた。

 

現行のカリキュラムは36年間変わっておらず、今日の学生のニーズに必ずしもマッチするものとはなっていないという。「英語力が向上しないのは、一つには、ある意味で時代遅れのカリキュラムに学生が魅力を感じず、英語を学ぶ意欲が低下しているからではないか」と山田委員長は推測する。授業を魅力的にするため、教養学術英語の基礎力を養う1年次の必修科目や、2年次に英語によるプレゼンテーションなどの発信能力を育む科目を設ける。

 

多くの学生が英語を学ぶ目的を見失っていることも、英語力が向上しない一因だという。「入学試験という差し迫った目標を突破すると、当座の英語学習の目的を見失う学生もいる」と山田委員長は指摘する。今までのどちらかと言うと受動的なカリキュラムを廃し、学生が積極的に目的を発見できる授業を目指す。「新カリキュラムは専門教育への出発点。高校で英語が苦手だった人も、新しい目的を見つけて頑張ってほしい」

 

03年の法人化に伴い、国立大学は研究を活かした社会貢献が求められるようになった。筑波大学は「世界的な研究教育拠点の創出」という目標を掲げており、英語改革はその一端を担う。「学生には国際社会で活躍できる人材になってほしい。それには研究力だけでなく、世界標準の英語力を身に付ける必要がある」と清水一彦副学長(教育)は話す。

   

Q「筑波大学の学習であなたの英語能力が向上したと思いますか」

 

09 年度2 月実施 回答者数433 人

 

教育環境委員会『英語教育に関する意識調査』報告書より

   

専門の英語への橋渡し

 

改革の柱は一般学術目的の英語(EGAP)から特定学術目的の英語(ESAP)への「橋渡し」だ。「教養学術英語から専門学術英語への円滑な移行がこの改革の目玉だ」と清水副学長は語る。

 

EGAPとESAPはどちらも学会や学術論文などに使われる英語だ。EGAPは理系・文系問わず必要とされる文法や単語を学び、ESAPはより専門的な分野で使われる表現を学ぶ。

 

新カリキュラムでは1・2年次にEGAPを学ぶ。そして主として2年次以降に、各学類・専門学群においてESAPを学ぶ。両者をつなぐ橋となるのが2年次必修科目「専門英語基礎演習」だ。「アカデミック・ライティング」「英語プレゼンテーション演習」「テストテイキング演習」の3科目のうちから、2科目を選んで履修する。「EGAPからESAPへの連動性を重視した結果、橋渡しとしてこの科目を設けた」と山田委員長は説明する。

 

「アカデミック・ライティング」は英語論文の書き方の基礎を、「英語プレゼンテーション演習」は英語を使った発表能力を身に付ける。「テストテイキング演習」はCALL教室を活用したりテスト形式の問題演習を行い、基礎力の定着を図るという。

 

改革前からすでに橋渡し科目を設けている学類・専門学群もある。国際総合、生物、数学、物理、化学、情報科学、体育の7学類・専門学群だ。これらの学類・専門学群は「専門英語基礎演習」を必修とはしない。また、芸術専門学群は「専門英語基礎演習」とは別に独自の橋渡し科目を用意し、どちらも選択できるようにするという。

EGAPとESAPの分類
  1年次 2年次 3年次以降
EGAP 1年次必修科目
 英語基礎
 異文化と英語
 総合英語
 各1.5単位3科目
専門英語基礎演習
 アカデミック・ライティング
 英語プレゼンテーション演習
 テストテイキング演習
 各0.5 単位2科目選択
 
ESAP   各学類が開設する専門の英語
 

EGAP・・English for General Academic Purposes 一般学術目的の英語

 

ESAP・・English for Specific Academic Purposes 特定学術目的の英語

   

橋渡し科目を試行実施

 

新カリキュラムでは、「読む・書く・聞く・話す」の4技能を中心とする英語の基礎を学んだ後、「英語プレゼンテーション演習」のような発表を重視する授業へと内容が変化する。

 

学生が変化に戸惑わないように調整するため、10年度から2年間「専門英語基礎演習」の試行実施が行われる。現在2年次以降の学生が履修できる通年科目「上級英語」を学期完結科目にし、その枠内で実施するという。受講した学生には授業評価アンケートを行い、集約した意見を授業に活かす。「今いる学生も、自分は改革に関係ないとは思わないで積極的に参加してほしい」と島田英語セクション代表は話す。

   

コラム | CALL教室導入

2B 棟に導入されたCALL 教室
 

10年度から外国語センターに6個所のCALL教室が導入される。CALLとはComputer Assisted Language Learningの略で、コンピュータを用いて言語学習を支援するシステムのことだ。すでにCALL教室は2B棟3階に2個所導入されている。今回外国語センターにも導入されることで、より多様な外国語教育が期待される。

 

CALL教室にはコンピュータが設置され、インターネットから外国語教材をダウンロードしたり、専用のソフトウェアで自習できる。DVDなどの現代的なメディアも使え、音声や画像を効果的に用いた授業が行えるようになるという。「現在のテープライブラリのような施設は時代に合わなくなり、長年CALL教室の導入が教職員から要望されていた。他大学では既に導入されているところも多いので、遅れをとらないようにしたい」と島田英語セクション代表は言う。

CALL教室は開放時間を決めて学生が自由に利用できるようにする予定だ。
   

学生からはこんな要望も

新カリキュラム案について話す上原委員長
 

以前から学生の中からも現在のカリキュラムに対する不満の声があがっていた。新カリキュラム案では現行のカリキュラムに対する学生の要望を取り入れているが、十分反映されていない意見もある。「改革の理念はアンケートで得た学生のニーズとほぼ一致していたが、具体的な内容は食い違う部分もある」と、教育委の上原伊音委員長(数学類2年)は話す。

 

「人によって得意な英語技能が違うので、授業内容に応じたクラス分けを行ってほしい」という意見もその一つだ。技能ごとにクラスを分ければ、個々の学生のレベルに合った授業が受けられる。だが、新カリキュラム案ではプレイスメントテストによるクラス分けについては特に変更点はない。

 

留学生との交流を「異文化と英語」などの授業に取り入れることも要望されている。留学生の受け入れ先となる大学を支援する「国際化拠点整備事業(グローバル30)」が進められているが、留学生と日本人が交流する授業はまだ少ない。国際総合学類などでは留学生を交えた授業が行われているが、全ての学類・専門学群で導入されているわけではない。「留学生との交流は異文化に触れるまたとない機会。英語カリキュラム改革とグローバル30が連携することで、英語の授業はもっと良くできるはず」と上原は語る。

 

教育委は、教室の活用法に不明確さが残る点も指摘している。新カリキュラム案では、CALL教室を「総合英語」で活用するとしているが、具体的な活用方法には言及していない。

 

今後教育委は、全学で改革に関する情報を共有していく。各学類・専門学群の座長団に情報を提供し、学生に伝達してもらう。改革後の授業内容に学生の意見が反映されるよう、大学に対して意見や提案もしていく。「これからも広く学生の意見を募っていきたい。学生にとってより良いカリキュラムになることを願う」

   

魅力ある英語教育へ

 

新カリキュラム導入は全学を巻き込んだ大改革となる。理念や授業計画は定まりつつあるが、学生の意見を汲み上げるのはこれからだ。

 

改革は始まったばかり。新カリキュラムが目指すのは、学生のニーズが反映された「魅力的」な英語教育だ。

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