ALUMNI

福岡 堅樹氏(TSUKUCOMM Vol.43)

201909131557-700x467.jpg

自分にしかできない両立の道を進む

ラグビー選手
パナソニック ワイルドナイツ
2019年男子15人制ラグビー日本代表
福岡 堅樹氏


プロのスポーツ選手として活躍できるのは、ごくわずかな「選ばれし者」。メジャーな競技ならなおさらです。一方で、引退後のキャリアも設計しなくてはなりません。在学中からラグビー日本代表選手としてプレーしながらも、医師への夢を諦めず、その両方に全力で向かっています。


-プロのラグビー選手というのは、どんな生活を送っているのでしょうか。

パナソニック ワイルドナイツの他に、サンウルブズという国際リーグ(スーパーラグビー)のチームにも所属しています。ラグビーは冬のスポーツなので、国内では、1~2月にシーズンが終わると、少しオフがあって、春にはまた体力トレーニングをして、というサイクルです。でも、スーパーラグビーは南半球のリーグなので、日本と南半球で半年ずつ、常にプレーしている感じです。代表選手としては、6月と11月に試合があるので、その時期はそちらに集中しています。

それぞれ、メンバーも練習の仕方も違いますし、試合が続くと痛いところなども出てきますから、体のコンディショニングは重要です。膝の手術を受けましたが、幸い、うまく回復しています。

今年は日本でワールドカップが開催されるので、みんなが応援してくれるのがとてもうれしいです。前回のワールドカップで、だいぶ注目されるようにはなりましたが、ラグビーは本当におもしろい競技なので、もっと多くの人に触れてもらえる機会があるといいですね。

-高校時代からラグビー選手として注目されていましたが、筑波大では体育専門学群ではなく、情報学群に入学しましたね。進学先はどのように選んだのですか。

ラグビーでの進学のオファーもいただいていたのですが、医学部に行くことしか考えていなかったので、国立大学で医学部があってラグビーが強いところということで、迷わず筑波大を選びました。筑波大には高校の先輩もいて、楽しそうな大学だという印象もありました。でも医学部は受験に失敗してしまって、すでに一浪していたので、他大学の医学部に行くか、浪人するか、ラグビーを取るか、の選択になった時に、やっぱり筑波大でラグビーをやりたくて、医学部以外で何か将来に活かせることを学ぼうと思いました。今の時代はどの分野でもコンピュータの技術が必要で、この先、医学の道に進んだ時にも、その知識をしっかり学んでおくことが役に立つと思って、情報学群に進学したんです。スポーツでもいろいろな場面でITが使われていますしね。

201909131558-700x467.jpg

-学生時代は、どんなふうに競技と学業を両立させていたのでしょうか。

部活との両立はそれほど大変でもありませんでしたが、代表選手になってからは、なかなか授業には出られない時期もありました。でも、単位
がしっかり取れるように、試験の時などは友人たちが協力してくれました。苦労しましたけど、卒論もちゃんと仕上げることができました。

つくばは田舎ですが、それも含めて楽しく過ごしました。みんなでボーリングに行ったり、馴染みの定食屋さんなんかも応援してくれたり、遊びも含めて良い記憶ばかりです。

ラグビー部は体育会系なのにとても自由で、組織の完成度というよりも、個々の選手の魅力が際立っていて、それが試合にも生かされていたと思います。ラグビーという競技自体、あまり上下関係のない風土なんですけど、1年の時から試合に出たり、代表選手に選ばれたりしても、みんなずっと変わらない態度で接してくれました。自分はキャプテンというキャラでもないし、純粋にラグビーを楽しめる場所でした。

-ここまでラグビーを極めた上で、やはり医師を目指すというのは、かなり強い決意ですね。

ラグビーはあと2年でやめようと決めています。年齢的にも、キャリアの切り替えができるギリギリのところですしね。パナソニックに入った時も、最初からその条件でした。でも、終わりを決めているからこそ頑張れるという面もあります。後悔しないように、自分にできることをやり
きりたいと思います。みんなの記憶に残るような選手になれればいいんですけど。

父や祖父など家族に医師がたくさんいたこともあって、自然と子供の頃から医師に憧れていました。医師になるように強制されたことは全くなくて、好きなことをやっていく中で、自分の意思で決めました。いまだにそれ以外に進みたい道は見つかりません。特に、内科医だった祖父の影響が大きく、「能力がある人間は、それを社会のために還元しなくてはならない。お前にはそれができる」と言われたのが強く心に残っています。ラグビーと医師の両方で、そういう生き方ができたら、と思っています。

選手のキャリアパスとしては、コーチや教員になるという選択肢もありますが、そういう指導者的な立場ではなく、医師としてラグビーに関わり続けたいと考えています。選手の気持ちもわかりますし、トップレベルで競技をした経験のある人が持つ説得力というのもあると思います。自分にしかできないことをやりたいんです。

-筑波大の後輩たちに向けて、是非メッセージを。

筑波大学には、自立できるかどうかが、自分自身の成長に大きくつながっていく環境があります。だから、何かしらやりたいことを見つけて、それに向かって一生懸命になることができれば、確実に成長できます。なかなか簡単なことではないかもしれませんが、自分はこれを頑張ろう、ということを一つでも決めて、大学生活を過ごして欲しいと思います。

201909131559-267x300.jpg

PROFILE

1992年 福岡県生まれ
2016年 筑波大学情報学群卒業
第49回(2014年)、第50回(2015年)の全国大学選手権で筑波大学ラグビー部準優勝に貢献。情報学群4年次在学中に、ラグビーワールドカップ2015の日本代表に選出。2016年、パナソニック ワイルドナイツ加入。同年7月、リオデジャネイロオリンピック7人制ラグビー日本代表選出。さらに同年11月にはスーパーラグビー サンウルブズに加入。パナソニック ワイルドナイツでのポジションは、ウイング(WTB)。2019年ラグビーワールドカップ日本代表候補。



関連リンク

TSUKUCOMM Vol.43
創基151年筑波大学開学50周年記念事業