生物・環境

カマドウマの腸内から新種の菌類を発見~進化の鍵を握る「腸内外両生菌類」~

研究イメージ画像 (Unguispora rhaphidophoridarumの2つの無性生殖ステージ。(左)カマドウマの糞上でのカビの姿、(右)カマドウマの腸内でのコウボの姿)

 カビやキノコ、コウボなど、菌類の仲間は現在、地球上のあらゆる環境に生息していますが、その祖先は水中生活をしており、進化の過程で、動物や植物とともに陸に上がってきたと考えられています。しかしながら、菌類の陸上進出の具体的な過程は未だ明らかになっていません。


 本研究では、菌類の中でも初期に陸上進出したと考えられる分類群の一つであるキクセラ亜門に属す、新属新種の菌類ウングイスポラ・ラフィドフォリダルム(Unguispora rhaphidophoridarum:ラテン語で「カマドウマの鉤爪を持つ胞子」)を発見し、記載報告をしました。この菌類は、カマドウマという昆虫の糞からカビとして見つかりましたが、後にカマドウマの腸内で、コウボの形で生活することが分かりました。このように、動物の腸の内と外とで著しく異なる二つの姿で生活する菌類は今まで知られていなかったため、新たに「腸内外両生菌類」という呼び名を付けました。


 従来、キクセラ亜門としては、節足動物の腸内菌と、土壌や動物の糞に生息する腐生菌が知られており、この分類群は、動物でいうと、水中と陸上の双方で生活をする両生類のような進化段階にあると考えられます。今回発見したUnguispora rhaphidophoridarumが、腸内菌と腐生菌の両方の性質を併せ持つことは、キクセラ亜門が動物の腸内環境と関わりながら進化したというシナリオを示唆しています。本研究成果は、菌類の陸上進出の進化過程の解明につながると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
出川 洋介 准教授


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生命環境系

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