生物・環境

解糖系酵素エノラーゼの新たな翻訳後修飾を発見

研究イメージ画像 (Image by Christoph Burgstedt/Shutterstock)

 タンパク質のヒスチジン残基で生じるメチル化修飾の新たな基質として、解糖系酵素エノラーゼのサブユニットであるγ-enolaseを同定しました。また、このメチル化が生じるヒスチジン残基を特定し、これがγ-enolaseの二量体形成や活性発現に重要であることを明らかにしました。

 タンパク質は、翻訳(生合成)後の化学修飾により、機能の多様性がもたらされます。その一つであるメチル化修飾は、一般にリジン残基やアルギニン残基に起こるとされていますが、近年、ヒスチジン残基にも起こることが分かってきました。また、ヒスチジンメチル化が広範なタンパク質に生じていることも示唆されています。一方で、生体組織内でどのようなタンパク質が、どのヒスチジン残基でメチル化修飾されるか、その詳細は不明でした。


 本研究グループは、マウスの骨格筋および脳組織を用いて、生化学的手法によるタンパク質の分画と分析化学的手法を組み合わせた解析から、ヒスチジン残基がメチル化修飾される新たな基質として、解糖系酵素エノラーゼのサブユニットであるγ-enolaseを同定しました。また、3種類の異なるアミノ酸配列を持つエノラーゼ(α、β、γ)のうち、脳神経系特異的に発現するγ-enolaseの190番目のヒスチジン残基がメチル化されることを明らかにしました。


 さらに、立体構造予測計算から、γ-enolaseのメチル化を受けるヒスチジン残基が、サブユニット二量体形成時の分子間水素結合に重要である可能性が推測され、その部位での分子間水素結合を阻害したγ-enolaseでは、二量体形成能および酵素活性が低下することを見いだしました。加えて、これまでに哺乳類で同定されている3種類のヒスチジンメチル化酵素のいずれも、γ-enolaseのメチル化反応を触媒しませんでした。以上のことから、今回同定したγ-enolaseは、新たなヒスチジンメチル化酵素を探索するための、独自性の高い研究材料となることが期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学生存ダイナミクス研究センター(TARA)
深水 昭吉 教授

筑波大学生命環境系
加香 孝一郎 講師

掲載論文

【題名】
γ-enolase (ENO2) is methylated at the Nτposition of His-190 among enolase isozymes.
(エノラーゼアイソザイムの中で、γ-enolaseはHis-190でNτメチル化修飾を受ける)
【掲載誌】
The Journal of Biochemistry
【DOI】
10.1093/jb/mvad042

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