生物・環境

アオウミウシを卵から成体まで育てることに世界で初めて成功

研究イメージ画像
 アオウミウシを実験室内で卵から成体まで育て、本種の幼生の着底過程、幼若体への変態過程、幼若体の成長過程の観察に成功しました。着底後の成長過程は、外部形態の変化に基づいて、9つのステージに分類されました。実験室内におけるイロウミウシ科の幼生から成体までの飼育は、世界初の報告です。

 ウミウシ類は巻貝の仲間で、大半の種は卵から孵化した直後は、貝殻を持つプランクトンとして海を漂って生活します。成長過程では、岩礁や海底などの上に着底し、変態して貝殻を失い、浮遊生活から底生生活に移行します。しかし、アオウミウシやシロウミウシなどの特に色鮮やかな体色を持つイロウミウシ科では、実験室内で卵から成体まで育てた例がなく、着底後から成体に至る過程は謎に包まれていました。

 本研究では、アオウミウシ(Hypselodoris festiva)の成体を採集し、実験室内で飼育して産卵させました。その約6日後、1つの卵塊からは数千個体以上の浮遊幼生が孵化しました。この幼生に微細藻類を与えて飼育したところ、約3週間後、幼生に眼点などが形成され、着底し変態が起こりました。変態過程で幼生は貝殻を脱ぎ捨て、底生生活へと移行しました。幼若体は成体の餌である海綿動物を食べて成長し、この過程で青や黄色からなる鮮やかな体色模様が完成し、触角、エラ、肛門などの成体の主要な器官が形成されていきました。

 観察した体色形成や器官形成過程に基づいて、本種の着底後の成長過程を変態期2ステージ、幼若体期7ステージの計9ステージに分類しました。これによって、外見上の特徴から本種の個体の成長段階が同定可能となり、本研究がイロウミウシ科の発生学的研究の指標になると考えられます。イロウミウシ科では従来、幼生や幼若体、成体の適切な飼育条件が不明でしたが、本研究の飼育法は他種においても応用可能であり、水族館展示などの商業利用においても貢献することが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
中野 裕昭 准教授
林 牧子 生命地球科学研究群生物学学位プログラム 博士後期課程3年

掲載論文

【題名】
Staging of post-settlement growth in the nudibranch Hypselodoris festiva.
(アオウミウシの着底後の成長過程のステージ分け)     
【掲載誌】
Scientific Reports
【DOI】
10.1038/s41598-024-66322-4

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