生物・環境

熱帯優良樹種チークの気候変動への遺伝的な適応性を予測

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 家具材などに用いられる重要樹種チークの天然分布域とインドネシアの植林木の遺伝的多様性を調査し、遺伝的多様性が気温と強く関係していることが分かりました。また、気候変動下における各集団の適応性を調べたところ、インド南部の集団の適応性が高いことを見いだしました。

 気温の上昇や降水パターンの変動、極端気象の頻発など気候変動の顕在化は、森林生態系にも深刻な影響を及ぼしています。特に熱帯林は気候変動に対して脆弱であり、林業もその影響を大きく受けると考えられます。樹木は長寿かつ固着性で、植林から収穫まで何十年もの期間を要するためです。そこで、樹種や樹木集団の気温など外的環境への適応性を知り、早い段階で植林計画に反映させることは、気候変動へのレジリエンス(弾力性)を高める上で極めて重要です。

 チークは家具材などに用いられる重要な樹種です。インドからインドシナにかけて天然分布を持ち、現在では世界約65カ国に植栽されています。本研究チームは、天然分布域から集めた種子を植栽したインドネシア・ジャワ島の国際産地試験林と、ジャワ島の植林地からサンプルを収集し、それらのゲノム(DNA上の遺伝情報)を解析しました。各個体間のゲノム上の多型の分布パターンと環境因子との相関を調べた結果、温度と強く連関がみられる領域を多数発見しました。さらに、気候変動下の温度や降水量の変動に対する適応性をゲノム情報から評価したところ、インド南部の集団の適応性が高いことを見出しました。

 これらの知見は、熱帯林業の重要樹種であるチークの遺伝資源管理をする際の重要な基礎情報となります。さらに、世界に広く植林されているチークの森林経営を、気候変動に対するレジリエンスの高めた施業に転換していく上でも極めて重要です。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学 農学学位プログラム
小沼 佑之介 (博士課程)3年次

国際農林水産業研究センター/筑波大学 生命環境系
谷 尚樹 主任研究員/教授(連携大学院)

筑波大学 生命環境系
津村 義彦 名誉教授

掲載論文

【題名】
Genomic adaptation in teak (Tectona grandis) to local climatic conditions and implication for resilient planting strategies on Java Island.
(気候に対するチークのゲノム適応性とジャワ島におけるレジリエンスを高める植林戦略)
【掲載誌】
Forest Science and Technology
【DOI】
21580103.2025.2519469

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