生物・環境

老化した脳の神経細胞と免疫細胞ミクログリアの新たなコミュニケーションの仕組みを解明

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(Image by ART-ur/Shutterstock)
 老齢期のマウスの神経細胞を観察し、小さな核の断片(微小核)が形成されることを見いだしました。また、形成された微小核は脳の免疫細胞ミクログリアに取り込まれ、形態変化を引き起こすとともに、脳の炎症反応や血管機能の調節に関わる遺伝子群の発現を誘導することを明らかにしました。

 哺乳動物の脳では、加齢に伴って炎症反応が引き起こされ、血管機能が徐々に低下していきます。脳の老化状態を調節する重要な細胞として、脳や脊髄に常在する免疫担当細胞であるミクログリアが知られています。ミクログリアは近年、胎生期から老齢期に至るまで、周囲の環境に応じてその性質を大きく変化させることが明らかとなってきました。本研究チームも、発達期におけるミクログリアの性質の変化に神経細胞由来の微小核(正常な核とは別に存在する小さな核様構造体)が関与していることを報告してきました(Yano S et al. Nat Neurosci 2025)。しかし、神経細胞由来の微小核が老齢期のミクログリアの変化にも関与しているのかは、これまで詳しく分かっていませんでした。

 本研究では、神経細胞の核膜を蛍光タンパク質(GFP)で標識したマウスを用い、老齢期の脳を観察しました。その結果、若齢期と比べ、大脳皮質のより深いところで微小核の数が有意に増加していることを確認しました。これら微小核は、若齢期の微小核に比べて、DNAの含有量が非常に少ないという特徴的な性質を持っていました。次に、透過型電子顕微鏡を使って微小核の形成過程を観察した結果、神経細胞の核膜が内側に陥入する現象と、微小核の形成が密接に連動していることを見出しました。また、微小核が形成される様子のライブ観察にも成功しました。

 さらに、発達期と同様に、これら微小核は周囲のミクログリアに取り込まれ、ミクログリアの形態や遺伝子発現を変化させました。特に、微小核を取り込んだミクログリアでは、糖鎖の一種であるヘパラン硫酸を生合成する遺伝子群の発現が上昇することが明らかになりました。へパラン硫酸が付加した糖タンパク質は、炎症反応や血管機能の調節に関わることが知られています。

 本研究成果をさらに発展させることで、神経細胞とミクログリアの新しい細胞間相互作用のメカニズムのみならず、加齢に伴う炎症応答や血管機能の低下を理解する新しいメカニズムの解明につながることが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

前田 ちひろ 生物学学位プログラム(博士後期課程)2年次

筑波大学生命環境系
鶴田 文憲 助教

掲載論文

【題名】
Age-associated neuronal micronuclei formation and transfer to microglia
(老齢期の神経細胞由来微小核の形成とミクログリア伝播)
【掲載誌】
Frontiers in Aging Neuroscience
【DOI】
10.3389/fnagi.2026.1787252

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