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脳が報酬価値を効果的にモニターする仕組みを解明 ~ドーパミンニューロンの二つの活動モードが切り替わる~

研究イメージ画像 (Image by Africa Studio/Shutterstock)

あなたの行きつけのバーで、バーテンダーがあなたのグラスにカクテルを注いでいる場面を想像してみてください。カクテルの量が徐々に増加していきます。カクテルがグラスを満たすまで注がれるとうれしい気持ちになりませんか? これは、徐々に増加していくカクテルの量(つまりカクテルの価値)を、報酬系と呼ばれる脳の領域がモニターしているからだと考えられます。


ただ、報酬系の中枢であるドーパミンニューロンは、持続時間が数百ミリ秒しかない一過性の神経活動によって報酬価値をモニターすると言われており、このような短時間の神経活動では持続的に増加するカクテルの価値をモニターすることはできません。


では、どのようなメカニズムが脳の中で働いているのでしょうか。本研究では、ドーパミンニューロンが、その活動を"一過性モード"と"持続性モード"の間で柔軟に切り替えることにより、持続的に変動する価値であっても効果的にモニターする機能を持つことを、サルの実験で明らかにしました。


実験では、ヒトに近縁で類似の脳構造を持つマカク属のサル(ニホンザル)に対し、これから得られる液体報酬の量を画面上に提示し、その際のドーパミンニューロンの活動を記録しました。提示する報酬量は、カクテルの例のように徐々に増加する条件、徐々に減少する条件、時間変化しない条件の三つに分けました。報酬量が時間変化しない条件では、ドーパミンニューロンは400ミリ秒程度の一過性の活動で報酬量をモニターしていました。一方、報酬量が時間とともに増加する条件では、一過性の活動が消失し、報酬量が増加する間はドーパミンニューロンの活動が持続的に増加し続けました。時間とともに減少する条件では、報酬量が減少する間は活動が持続的に減少し続けました。本研究で得られた結果から、ドーパミンニューロンは二つの活動モードを柔軟に切り替えることによって、どのような条件下でも効果的に報酬価値をモニターすることができると考えられます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
松本 正幸 教授

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