医療・健康

アルツハイマー型認知症の極早期では大脳神経ネットワークが過剰に整備された状態となる

研究イメージ画像 (Image by ART-ur/Shutterstock)

 アルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease: AD)では、近似記憶障害などの臨床症状の出現する前から、アミロイド-βというたんぱく質の脳内への蓄積や大脳形態の変化などが認められることが知られており、脳神経同士のネットワークも徐々に結びつきが緩くなります。しかし、アルツハイマー型認知症の前駆期である軽度認知機能障害(mild cognitive impairment: MCI)や、さらにその前の発症前段階における大脳神経ネットワークの変容について検討した研究はこれまでほとんどありません。本研究では、軽度の認知機能障害を有する高齢者を対象に、アミロイド-β測定用PET(陽電子放出断層撮影、Positron emission tomography)および頭部MRI検査を行い、アミロイド-β蓄積と局所脳神経ネットワークとの関連について検討しました。その結果、アミロイド-βの集積が多いほど左頭頂葉領域の脳神経ネットワークが能率的に統合されていることが明らかとなりました。


 ADでは、症状の進行に伴い大脳神経ネットワークも障害を受けます。一方、健常~軽度のもの忘れを自覚する程度の高齢者では、アミロイド-βの蓄積が高いほど、頭頂葉領域などといったADでよく障害される領域の脳神経ネットワークが効率よく統合されていることがしばしば指摘されています。本研究結果は、ADの極早期において頭頂葉領域を中心とした大脳神経ネットワークの過結合(hyperconnectivity)が生じることを示唆しており、ADの進行を診る意味で非常に重要な所見の一つになると考えられます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学 医学医療系
新井 哲明 教授

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