医療・健康

細胞内のバランスを崩す過剰な超硫黄分子の排出機構を解明

研究イメージ画像 (Image by ART-ur/Shutterstock)

 私たちの体を構成する細胞の中は酸化と還元のバランスが保たれており、それが崩れると毒性や疾患につながります。本研究グループはこれまでに、そのかく乱因子となる化学物質を不活性化して細胞を守る役割の物質として、細胞内で産生される超硫黄分子の存在を明らかにしてきました。この超硫黄分子は、生体にとっては有益な機能を持ちますが、その反面、化学的に反応性が高いことから、細胞内での量が増えすぎた場合の影響が懸念されていました。


 本研究では、マウス個体や培養細胞で超硫黄分子が過剰に存在する状況を作り出し、その際に生じる現象を調べました。その結果、マウス体重の著しい減少やさまざまな細胞機能の破綻が観察されたことから、過剰な超硫黄分子の蓄積が生体に弊害をもたらす(硫黄ストレス)ことが明らかとなりました。そこで、生体が硫黄ストレスをどのように回避しているのか、詳細な解析を行ったところ、細胞内の過剰な超硫黄分子を細胞外へと排出する現象が見いだされました。その仕組みとして、超硫黄分子の一つであるシステインパースルフィド(CysSSH)が、細胞膜に存在する固有の輸送体タンパク質を介して排出されることが分かりました。


 本研究成果は、生体に有益な機能を持つ超硫黄分子も、細胞内の量が過剰となれば毒性を持つこと、また、その量が適正に維持されるよう安全機構が備わっていることを示しており、超硫黄分子を制御する基盤メカニズムの理解に寄与すると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系 教授/九州大学大学院薬学研究院 客員教授
熊谷 嘉人

九州大学大学院薬学研究院 教授
西田 基宏

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