医療・健康

血管狭窄時の新生内膜形成に内皮間葉転換が寄与する〜血管リモデリングの仕組みを解明〜

研究イメージ画像 (Image by Christoph Burgstedt/Shutterstock)

 血管の内表面(上皮)を構成する血管内皮細胞が非上皮系の間葉細胞へと分化転換するプロセス(内皮間葉転換:EndMT)は、さまざまな血管リモデリングに関与することが知られています。しかし、血管狭窄の原因となる新生内膜形成(血管の内側の層が厚くなる)における、EndMTの役割と分子制御機構はこれまで明らかにされていませんでした。本研究では、マウス頸動脈結紮(けっさつ)モデルを用いて、血流が停止した状態によって結紮部位よりも中枢側の頸動脈が狭窄するプロセスを経時観察しました。これまで考えられていた中膜が主体の閉塞ではなく、最も内層の血管内皮細胞が新生内膜形成に寄与することを見いだしました。さらに、血管内皮細胞の形質を維持したままEndMTが生じる現象「部分的な内皮間葉転換: partial EndMT」が狭窄に関わることを明らかにしました。


 この分子メカニズムを明らかにするためにヒト動脈内皮細胞を用いて、血流停止を模倣した低酸素環境が、①血球細胞マーカーであるCD45発現を伴ってEndMTを誘導すること ②細胞-細胞間の接着を維持する仕組みが、partial EndMTの制御に重要であることを突き止めました。


 本研究により、血管狭窄の原因となる新生内膜の由来が血管内皮細胞であること、さらに内皮細胞のEndMTが血管狭窄時の血管リモデリングに寄与することが明らかになりました。今後、partial EndMTの詳細なメカニズムを解明することにより、EndMTを標的とした、血管狭窄の新たな治療法開発につながると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生存ダイナミクス研究センター
山城 義人 准教授(現:国立循環器病研究センター 先端医療技術開発部 室長)
柳沢 裕美 教授

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