医療・健康

コロナ禍では、孤独感が日本人の自殺念慮に強い影響を与えた

研究イメージ画像 (Image by Dan Race/Shutterstock)

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間(コロナ禍)には、世界中でメンタルヘルスの悪化が問題となり、日本では、感染拡大が始まった2020年、11年ぶりに自殺者数が増加に転じ、現在まで減少の兆しはありません。その要因として、コロナへの感染恐怖や失業などの経済問題に加え、検疫、隔離やソーシャルディスタンスによる社会的孤立、孤独感の悪化があるといわれています。しかし、これらのうちのどれが、どのように、死にたい気持ち(自殺念慮)に影響するのかは、分かっていませんでした。


 本研究では、2021年2月に、日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS study)において収集された、2.6万人の大規模全国アンケート調査のデータを用いて、自殺念慮への社会的孤立、孤独感、うつ状態の影響度を分析しました。分析は男女別に行い、年代や経済状態などを調整して有病率を算出しました。


 分析の結果、男性の15%、女性の16%が自殺念慮を持っており、このうち男性の23%、女性の20%はパンデミック期になって初めて自殺念慮を抱くようになっていました。また孤独感は経済苦境や社会的孤立よりも自殺念慮への影響力が強く、抑うつ状態を調整しても同様の傾向であることが分かりました。孤独感が直接的に、またうつ状態を介して間接的にも、自殺念慮に強い影響を与えることが明らかとなったことから、孤独感を抱いている人への心理的なサポートが、孤立・孤独対策のみならず自殺対策としても重要と考えられます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系災害・地域精神医学
太刀川 弘和 教授

筑波大学人文社会系
松島 みどり 准教授

掲載論文

【題名】
Impact of loneliness on suicidal ideation during the COVID-19 pandemic: findings from a cross-sectional online survey in Japan.
(新型コロナウイルス・パンデミック期間に孤独感が自殺念慮に与えた影響:日本のオンライン横断調査の知見から)
【掲載誌】
BMJ Open
【DOI】
10.1136/bmjopen-2022-063363

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