医療・健康

酸素飽和度内視鏡イメージングで潰瘍性大腸炎の便意切迫感と重症度を評価

研究イメージ画像
(Image by Photoroyalty/Shutterstock)
 潰瘍性大腸炎において、酸素飽和度イメージング内視鏡検査によって計測した大腸粘膜の酸素飽和度が、症状の一つである便意切迫感および大腸炎の重症度を客観的に評価する新たな指標として有用であることを見いだしました。

 潰瘍性大腸炎(UC)は、直腸から連続して炎症が広がる原因不明の大腸炎です。UCの患者は、下痢、血便、そして便意切迫感(突然かつ緊急に感じる排便の必要性)に悩まされます。治療においては、そのような臨床症状をとることが初期の目標であり、その後、大腸内視鏡検査を実施して、大腸粘膜の炎症が十分にとれていることが最終的なゴールとなります。しかし、便意切迫感については、これにより生活の質が低下する患者が多いにも関わらず、その症状を客観的に評価する方法がありません。また、大腸内視鏡検査では、大腸炎の重症度をスコアを用いて評価しますが、医師間のばらつきがあり、病状の客観的評価が難しくなることも問題になっています。


 本研究では、UCの炎症した大腸粘膜に生じる低酸素に着目しました。炎症粘膜では、炎症細胞が大量の酸素を消費し、異常な血管の発達により粘膜への血流が低下するため、低酸素状態が生じます。そこで、UC患者に酸素飽和度イメージング内視鏡検査を実施して、大腸粘膜の酸素飽和度(酸素の量)を計測しました。その結果、臨床症状、特に便意切迫感が強いほど、直腸粘膜の酸素飽和度が低くなることを発見しました。また、内視鏡や顕微鏡で評価した大腸炎の程度が強いほど、大腸粘膜の酸素飽和度が低くなることも見いだしました。


 このことは、内視鏡検査で得られた酸素飽和度の数値で、UCの便意切迫感と大腸炎の重症度を評価できることを示しており、客観性の高い病状評価法の確立につながると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
秋山 慎太郎 講師
土屋 輝一郎 教授


掲載論文

【題名】
Clinical Usefulness of Hypoxia Imaging Colonoscopy for the Objective Measurement of Ulcerative Colitis Disease Activity
(潰瘍性大腸炎疾患活動性の客観的評価における酸素飽和度イメージング内視鏡の臨床的有用性)
【掲載誌】
Gastrointestinal Endoscopy
【DOI】
10.1016/j.gie.2023.12.035

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