医療・健康

個々人のアルコール代謝遺伝子情報に基づいた減酒指導で 過剰飲酒をしている若年成人の飲酒量が減少

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過剰なアルコール摂取は健康被害を招く恐れがあります。本研究では、過剰飲酒習慣のある若年成人を対象に、個々人のアルコール代謝遺伝子検査結果に基づいた減酒指導を行った結果、飲酒量が有意に減少することを確認しました。個別性を重視した減酒指導の重要性が示唆されます。

過剰なアルコール摂取は世界的な課題の一つで、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも含まれています。2024年2月に公表された国の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、遺伝子によって規定されるアルコール分解酵素の働きの強弱などが個人によって大きく異なり、飲酒を行う際にはそのことに注意する必要があると述べられています。しかし、個々人が自分自身のアルコール分解酵素の働きの強さを知ることで、飲酒量に対してどれくらい影響があるのかについては、研究がほとんどありませんでした。

本研究では、過剰なアルコール摂取者である20歳から30歳の成人196人を介入群と対照群に無作為に分け、介入群には参加者自身のアルコール代謝遺伝子情報を元にした減酒指導を1回実施しました。対照群にはアルコールに関する指導パンフレットを渡しました。測定したアルコール代謝遺伝子は1B型アルコール脱水素酵素(ADH1B)と2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の二つでした。

その後の飲酒量や飲酒習慣のスクリーニングテスト(AUDIT-C)の推移を観察したところ、介入群では研究開始3カ月後に飲酒量やAUDIT-Cのスコアが対照群と比べて有意に減少しました。研究開始6カ月後には対照群と比べて介入群で飲酒量減少は見られましたが、有意差は消失しました。一方、AUDIT-Cのスコアは有意な減少が続いていました。

この結果から、過剰なアルコール摂取を減らすための対策として、一人一人のアルコール代謝遺伝子情報を含む、個別性を重視した減酒指導が有用である可能性が示唆されました。過剰なアルコール摂取による健康被害を抑えるため、飲酒者が自分自身の体質を把握し、自己管理できる体制づくりが必要だと考えられます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系/健幸ライフスタイル開発研究センター
吉本 尚 准教授
  
筑波大学健幸ライフスタイル開発研究センター
大脇 由紀子 客員研究員

掲載論文

【題名】
Effectiveness of Genetic Feedback on Alcohol Metabolism to Reduce Alcohol Consumption in Young Adults: An Open-label Randomized Controlled Trial.
(アルコール代謝遺伝子結果を含む減酒指導による若年者の飲酒量低減効果: 非盲検ランダム化比較試験)
【掲載誌】
BMC Medicine
【DOI】
10.1186/s12916-024-03422-y

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