医療・健康
日本におけるCOVID-19流行に伴う帝王切開の割合の変化

日本における帝王切開の割合が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行中(2020年1月~22年10月)は21.19%となり、流行前の20.27%から約1ポイント増えたことが明らかになりました。COVID-19流行に伴って、感染制御などを目的に帝王切開が行われたことが寄与した可能性が示唆されました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行中、日本産婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会の3学会合同ガイドラインに関連する記載があったこともあり、分娩時間の短縮や感染制御の目的で帝王切開が行われることがありました。このことは帝王切開の割合の上昇に寄与し、多くの日本の女性に影響を与えた可能性がありましたが、COVID-19流行前後の帝王切開実施状況の評価はこれまで行われてきませんでした。
本研究では、利用可能だった2018年4月から2022年10月までの匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)の特別抽出データおよび人口動態統計を用い、帝王切開の割合(全帝王切開数÷全出生数)を日本全体で比較しました。COVID-19流行前(2018年4月から2019年12月)の帝王切開の割合は20.27%だったのに対し、COVID-19流行中(2020年1月から2022年10月)は21.19%となりました。流行の波で分けてみると、帝王切開の割合は第6波(2022年1月から6月)で最大の22.14%となり、第7波(2022年7月から10月)では21.27%となりました。これらのことから、COVID-19流行中、日本全体で帝王切開の割合がわずかながら増加したことが示されました。
帝王切開の割合は近年、日本で増加傾向でしたが、本研究では得られたデータの期間が限られていたため、利用可能なデータ期間以前の増加傾向については考慮しませんでした。
本研究の成果も踏まえて、将来の感染症流行時の分娩方法のあり方に対する議論を行い、対策を検討していくことが重要だと考えます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
筑波大学医学医療系島田 憲佑 特任講師(研究当時:筑波大学医学学位プログラム(博士課程))
小宮山 潤 助教
国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局 グローバルヘルス政策研究センター
磯 博康 センター長
掲載論文
- 【題名】
-
Changes in Proportions of Cesarean Section before and during the COVID-19 Pandemic in Japan
(日本におけるCOVID-19流行前と流行中の帝王切開の割合の変化) - 【掲載誌】
- The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research
- 【DOI】
- 10.1111/jog.16370