医療・健康
プライマリ・ケアの専門医が「意味」を感じる仕事は6項目に分類できる
日本のプライマリ・ケアの専門医に対するインタビュー調査により、専門医として仕事に「意味」を感じる経験を、多様な健康問題や複雑な背景を持つ患者への診療や、教育や地域社会への貢献など、6項目に分類しました。これらの経験は、プライマリ・ケア医のキャリア形成に役立つと期待されます。
少子高齢化社会における医療では、特定の臓器だけを診る専門医だけでなく、患者の全体を診る総合診療医(プライマリ・ケア医)の役割がますます重要になります。しかし、日本ではプライマリ・ケアが正式な専門領域として認められたのはごく最近であり、プライマリ・ケア医は、「専門性が曖昧」「ロールモデルが少ない」といった不安を抱えることがあります。
本研究では、このような不安を軽減するヒントとして、日本のプライマリ・ケア医がどのような経験に仕事の意味を感じているのかを明らかにするために、プライマリ・ケア医14人を対象に、仕事で「意味がある」と感じた経験についてインタビュー調査を行いました。その結果、プライマリ・ケア医が仕事に意味を感じる経験は、以下の6項目:①多様な健康問題に対応できること、②患者やその家族の困りごとに対して包括的にアプローチすること、③継続的な診療の中で、患者との信頼関係を築くこと、④他の医療専門職と協力して複雑な問題を抱える患者をサポートすること、⑤医学生や医療者への教育に貢献すること、⑥地域社会に貢献すること、に分類できることが分かりました。
これらの結果から、日本のプライマリ・ケア医は、さまざまな患者との関わりを通して自分たちの専門能力を高めたり、教育や地域社会への貢献を実感したりする経験をしたときに、仕事への意味を感じていることが明らかになりました。これらの経験は、プライマリ・ケア医が、より充実したキャリアを築くためのきっかけになると考えられます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
筑波大学医学医療系山本 由布 助教
春田 淳志 客員准教授(研究当時、現:慶應義塾大学医学部 医学教育統轄センター/総合診療教育センター 教授)
掲載論文
- 【題名】
-
Meaningful work experiences of certified primary care physicians in Japan: A qualitative study.
(日本のプライマリ・ケア専門医はどのような経験に「仕事の意味」を感じているか: 質的研究) - 【掲載誌】
- BMC primary care
- 【DOI】
- 10.1186/s12875-025-03026-2