テクノロジー・材料

超音波によるがん治療を高速シミュレーションできる数理モデルを開発

研究イメージ画像 (Image by wangmando/Shutterstock)

 切開手術に代わるがん治療法として、集束超音波が用いられるようになってきました。この方法では、体外から超音波を腫瘍に集束させながら照射し、正常な細胞を傷つけることなく、腫瘍のみをピンポイントで加熱除去させることができます。近年、腫瘍付近に微小な気泡(マイクロバブル)を注入し、超音波の加熱作用を劇的に向上させる方法が注目されていますが、安全かつ効果的に治療を行うためには、体内の温度分布を事前にシミュレーションすることが欠かせません。


 従来のシミュレーションでは、多くの方程式を用いて、超音波の伝播とマイクロバブルによる影響をそれぞれ解く方法が主流でした。しかし、複雑な人体組織を表すために空間多次元での計算が必要な上、マイクロバブルの膨張・収縮運動を扱うことから計算が複雑化するため、計算時間が極めて膨大になるという問題点があります。治療法や治療効果を素早く提示するためにも、シミュレーションの高速化は重要です。


 本研究では、超音波の伝播と、マイクロバブルの膨張・収縮運動による影響を、1本の方程式だけで表す新たな数理モデルの開発に成功しました。このモデルを用いてがん治療を想定したシミュレーションを実施したところ、患部の温度上昇がピンポイントで示されただけでなく、マイクロバブル内の気体の種類を変更すると、温度上昇を約10度も向上できることが分かりました。本研究結果により、超音波によるがん治療の効果を最大限に発揮するための、最適な治療条件の提示が可能になると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学システム情報系
金川 哲也 助教

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システム情報系


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