テクノロジー・材料

冷えていないのに冷たい温度感覚VRを実現

研究イメージ画像
(Image by Denis Belitsky, Alex from the Rock/Shutterstock)
 気温の変化など、皮膚で感じる連続的な温度感覚は、実際には次第に慣れて、刺激を感じにくくなります。この現象は、仮想空間における場面の切り替えの際に、温度感覚のずれを生じます。本研究では、実質的に皮膚温度を変化させることなく、非接触で仮想的冷感を与える技術を開発しました。

 私たちは皮膚を通して気温の変化や周囲の環境を認識しています。例えば、頬が赤くなるほど冷えることで、寒い屋外に自分がいることを認識したり、肌がじんわりと温まることで、春の陽気を感じます。しかし、人は同じ刺激を受け続けると慣れてしまい、新しい刺激を感じにくくなります。このような「温度慣れ」により、仮想(VR)空間において場面が切り替わった際に、適切な温度感覚が得られないことがあります。


 本研究では、素早い温度変化を感じやすいという人間が温度を感じる仕組みを活用し、皮膚の温度変化をほぼゼロに保ちつつ、温度感覚を連続的に感じさせる非接触型冷覚提示技術を開発しました。この技術では、冷たい気流と光源を使用し、素早い冷刺激と緩やかな温刺激を瞬時に切り替えて、皮膚温度変化をほぼゼロに保ちながら冷覚を引き起こします。評価した結果、実質的な温度変化を伴わない仮想的な冷感を、非接触で提供できることが示されました。さらに、皮膚温度を継続的に低下させる場合と同程度の強さの冷感の実現に成功しました。


 本技術は、身体の状態を変化させずに皮膚感覚を人工的に作り出す新たな考え方を提供するもので、メタバースをはじめとするVR世界において、突然の冷風などの瞬間的な温度感覚だけでなく、海外旅行などの長時間にわたる連続的な温度感覚を伴う体験が可能になると期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学システム情報系
黒田 嘉宏 教授
XU Jiayi (理工情報生命学術院 博士後期課程3年、研究当時)


掲載論文

【題名】
Integration of Independent Heat Transfer Mechanisms for Non-Contact Cold Sensation Presentation with Low Residual Heat.
(低い残熱を伴う非接触冷覚提示のための独立した伝熱メカニズムの統合)
【掲載誌】
IEEE Transactions on Haptics
【DOI】
10.1109/TOH.2023.3324754

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