ALUMNI

桝 厚生氏

2017/12

桝 厚生(マス コウセイ)氏

1996年入学・2000年卒業 第一学群人文学類
2000年入学・2002年修了 修士課程環境科学研究科

 環境省北海道地方環境事務所 上川自然保護官事務所 首席自然保護官

① 現在のお仕事を聞かせてください。

環境省で,国立公園の管理や野生生物の保全を行う技術系職員(通称:レンジャー)として働いています。これまで,吉野熊野国立公園の管理,南極地域の環境の保護(第47次南極地域観測隊とともに,南極にも行きました),新たな国立公園の指定に関する関係省庁との調整,風力発電施設のバードストライク問題への対処やニホンウナギなどの希少生物保護のための調査や指針づくりなどに取り組んできました。
2016年4月からは,北海道上川郡上川町にある上川自然保護官事務所で,大雪山国立公園の管理をしています。大雪山国立公園は,広大で原生的な山岳景観が特徴の広大な国立公園(神奈川県と同じくらいの大きさ)ですが,登山道の荒廃やし尿の散乱などの課題があります。これらの課題の解決に向けて,登山道の管理者の他,国立公園の利用者を含めた多様な関係者が連携し,管理運営に参加する新たな仕組みや体制づくりに取り組んでいます。


② 今改めて,筑波大学で良かったと思うことを聞かせてください。


筑波大学では民俗学を学び,主に東北地方でツキノワグマなどを対象とした伝統的な狩猟者であるマタギの文化を研究していました。卒業論文や修士論文を書くために山形県の飯豊町や小国町で暮らしながらフィールドワークをしました。それ以外にも専攻した民俗学の他,考古学や日本の生活や文化をテーマとした講義や実習の中にフィールドワークする機会が多くあったことが今の仕事に非常に役立ち,良かったと感じています。
フィールドワークの基本は,歩く,見る,聞く。これらを通じて,対象とする相手や地域社会の現状を認識し,生活の変遷などの来し方に思い至り,最終的に相手や地域社会ありようを理解しようとします。
国立公園は,「本来は地域人々が独自の自然観に基づき生活の場として利用してきた地域を,世界に誇れる日本一の景観として位置付けて,国民全体のために保護して利用させる制度である」という側面があるため,地域社会は多かれ少なかれ国立公園に対して外から押し付けられた価値や制度として捉えられ,葛藤や複雑な思いを抱いてしまうという宿命をもってしまうと私は考えます。
この中で,国立公園をよりよいものにしていくため,地域の関係者と一緒に将来目標を考えていく上では,業務それ自体がフィールドワークであるという気持ちが重要だと思っています。

③ 本学と本学の学生に対してメッセージをお願いします。

環境省での私の職種は,自然環境の保全が専門であるため理系出身者がほとんどで(ちなみに,筑波大学からも生物資源学類や生物学類の出身者が多く活躍しています。),私のように文系出身者は少ないです。
しかし,自分が未知の分野に飛び込んでも,今勉強したり,研究したりしていることは,決して無駄にはならないということをつくづく感じます。大学で学んだことを自分の強みとして捉えて目の前の課題や仕事と結び付けて活かす,意外な組み合わせから全く新しいことを生み出すという発想が重要だと思います。

創基151年筑波大学開学50周年記念事業