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影澤 潤一氏(TSUKUCOMM Vol.57)

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ゲームはみんなを元気にする最強ツール

株式会社NTTe-Sports 副社長 執行役員
影澤 潤一(かげさわ じゅんいち)氏



-新しく設立された会社ですよね。どんなことを目指しているのですか。

 ICT(情報通信技術)を使って地域を活性化する、地域の課題を解決する、というのがミッションです。そのツールとしてeスポーツ(ゲーム)を使おうということなんです。もちろん、ただゲームをすれば地域が元気になるわけではないので、イベントを企画するとか、サービスを作って提供するということですね。個人対個人でゲームをするのではなく、まず地元のコミュニティを作り、コミュニティ同士をゲームでつないで、面的に広がりのある地域貢献を目指しています。
 ゲーム大会自体は以前からたくさんありましたけど、これまでは大会運営に通信の専門家がしっかり入ることはなかったので、その部分で事業として取り組むというのは、実は他にはないチャレンジなんです。
 ビジネス的にはZ世代がターゲットになりがちですが、ゲームは親子で楽しんだり、離れた場所にいたり、障害のある人たちも参加できて、リアルなスポーツよりもずっとボーダーレスなんです。スタジアムで何万人もの観客が入るような大会もあれば、社内レクの一環としても活用できるというのも、eスポーツのいいところです。



-在学中から ゲーム三昧だったのですか。

 ゲームを始めたのは小学校の頃です。近所のゲームセンターでは物足りなくなって、強い人たちが集まる秋葉原とかに行ってました。高校になると、学校を抜け出して遊んだりもしましたね。地元は都内ですが、親元を離れつつ、東京にも近い大学、ということで筑波大を選びました。工学システム学類ができたばかりで、工学も情報も両方学べそうだったことも決め手になりました。
 当時はインターネット黎明期で、モデムで接続していたんですけど、平砂宿舎に入ったら内線でインターネットが使い放題だったので、夢みたいな環境でした。自分でウェブサイトを立ち上げたり、ゲーム動画を配信したり、大学のリソースは使い倒した感じです。今なら怒られちゃうかもしれませんね。
 大学でもゲームばかりしていましたが、学内には対戦相手がいなくなってしまい、むしろ学外のゲーム好きの人たちとの交流の方が多かったですね。おかげで、世代や性別、職業もいろんな人たちとの輪が広がって、ますますゲームの良さを実感しました。



-プロゲーマーの道などは 考えなかったのですか。

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 就活をする頃にはプロゲーマーが登場していました。ゲーム仲間でプロになった人もたくさんいます。でも自分としては、つくばでの経験もあって、ゲームの成績を上げることよりも、みんなで一緒にゲームを楽しめる環境作りに関心があったんです。ゲーム大会って、優勝者以外は全員敗者でしょ。それだとほとんどの参加者は楽しくない。そうじゃない世界を作りたいと思いました。
 好きなことを仕事にすると純粋に楽しめなくなってしまうので、直接的にゲームを開発したり売ったり、というような業種は考えませんでしたね。それまでの自分の活動ができたのは、インターネットのおかげによるところがとても大きかったこともあり、仕事としては通信分野を選びました。時代的に、ちょうど通信技術とゲームが同時に発展していったような時期で、これは自分がやらなきゃ、っていう気持ちになりました。



-結局、好きなことが仕事に なりましたね。

 うーん、そうなんですけど、正直、微妙ですね。もちろん、やりたいことがやりやすい環境だとは思います。でも、仕事にすると自分が好きだからやっていたことが、今度は稼ぐことの手段になってしまい、純粋に楽しめなくなってしまう、そんな瞬間が少なからずあります。イチローさんも似たようなことをおっしゃっていましたし、そこはやはり日々葛藤しますね(笑
 それでも、ゲームに関わる仕事をする大人が、ハッピーに働いているように見えなければ、次の世代の人たちの夢や目標を壊してしまうことになりますよね。ゲームばっかりやっているとろくな大人にならない、と言われてきたのを覆さなければならないという思いもあります。好きなことをやり続けてもそれなりの仕事や社会的地位に就けるということを示すべき立場にいる、という自覚はあります。自分自身がもっと楽しめるためにも、そのあたりを乗り越えていきたいと思っています。



-筑波大の後輩たちへメッセージをぜひお願いします。

 筑波大は、面積だけでなくて懐も広い大学です。その中にいる時は気づかないかもしれませんが、良い意味でも悪い意味でも変わっていて、すごくいい経験をしていると思います。だから筑波大そのものをよく見て、好きになってほしいし、将来、折に触れて帰ってきたいと思えるような場所にしてほしいです。
 教員にも学生にも、すごいと思える人がなにげにたくさんいる、というのも筑波大らしいところですよね。それが刺激にもなります。東京へのアクセスも良くなりましたが、そっちに気を取られ過ぎずに、筑波魂(もうそんな言葉は通じないかもしれませんけど)と、たくさんの経験を得てください。なにかに集中できる、没頭できる環境を利用しないのはもったいないですよ。



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PROFILE  かげさわ じゅんいち

1979年 東京都生まれ
2004年 理工学研究科修了
2004年 東日本電信電話株式会社(NTT東日本)入社
2020年 株式会社NTTe-Sports副社長



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