生物・環境

海洋酸性化の進行に伴う石灰藻の減少を定量的に予測することに成功

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 石灰藻(体に炭酸カルシウムを沈着させる海藻類)は世界の浅海域に広く分布しており、沿岸の地形や堆積物の形成、他の生物への生息場の提供など重要な役割を担っています。海洋酸性化は炭酸カルシウムの形成を阻害するため、石灰藻への影響は深刻だと考えられてきましたが、その影響の現れ方や程度は報告例ごとに異なっており、包括的な理解に基づく定量化が求められています。


 本研究では、298本の論文で公表されているデータを統合的に処理するメタアナリシスを駆使し、海洋酸性化が石灰化に及ぼす影響の定量化に成功しました。また、石灰藻に影響するさまざまな環境変動因子を比較したところ、海洋酸性化の影響が最も深刻であり、沿岸生態系の将来を決定づける重要性が示されました。他の環境変動と海洋酸性化の相互作用はあまり多くありませんが、石灰藻表面のpHを変化させ得る要因との間には、相乗的もしくは拮抗的影響をもたらします。海洋酸性化の進行は石灰藻の種多様性を減少させ、より適応性の高い種のみが生き残る可能性があります。


 本研究により、沿岸生態系における、気候変動による将来の具体的な影響の大きさや顕在化する時期の特定、および海洋酸性化に対する石灰藻の応答を詳細に予測することが可能となりました。例えば、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示す、最も気温上昇が高くなるシナリオのRCP8.5では石灰藻への影響は極めて深刻になると予測されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
ベンジャミン ハーベイ 助教


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