生物・環境

【Nature Index Selection】クシクラゲの泳ぎを支える櫛板の二段構造を解明(Research highlights 2023年2月)

シュプリンガー・ネイチャーが運営するデータベースサイトNature Indexでは、毎月、主要な82ジャーナルの中から、本学所属の研究者による研究論文1報を、Research highlightsとして選出しています。2023年2月は、本件が紹介されました。
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研究イメージ画像 (隣り合った櫛板が半同調的に波打っているようす)

 クシクラゲは、一般によく知られているクラゲ(刺胞動物)とは異なり、刺胞のない有櫛(ゆうしつ)動物に属する海洋生物です。クシクラゲの大きな特徴は、光の反射により虹色に輝く運動器官「櫛板(くしいた)」を持つことです。櫛板は、私たちの気管で異物を排除するために絶えず動いているものと同じ「繊毛」が数万本束ねられた巨大な構造をしており、肉眼でも見ることができます。


 本研究では、巨大な櫛板がどのようにできているのかを知るために、クシクラゲの一種であるカブトクラゲを用いて、繊毛を束ねているタンパク質に着目しました。その結果、繊毛間にある架橋構造に存在し、有櫛動物にしか存在しない新規のタンパク質を発見し、CTENO189(テノ189)と命名しました。本研究チームが2019年に発見した同様のタンパク質CTENO64は、櫛板の根元部分にしか存在しませんが、今回発見したCTENO189は、櫛板の残りの部分全体に存在し、両タンパク質の存在領域には明確な境界が見られました。さらに、CTENO64が櫛板内の個々の繊毛の方向を決め、櫛板が平面的に打つために必要であるのに対し、CTENO189は水の流れを一方向に効率よく起こす役割を持っていることを明らかにしました。つまり、櫛板は、構造的にも機能的にも二段構造をとっているということになります。本研究成果は、ヒト繊毛病の理解をはじめ、水中マイクロマシーンの開発など、多岐にわたる応用の可能性が期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
稲葉 一男 教授

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