生物・環境

世界最北の島で新種の植物病原菌を発見

研究イメージ画像

 世界最北の島であるエルズミア島で、ホッキョクヤナギの葉に病気を引き起こす新種の真菌類を発見しました。北極域における植物病原菌に関する報告は限られていました。本研究は、北極域でも、地域や宿主の種レベルの違いによって異なる病原菌種が存在することを示しています。

 カナダ・エルズミア島は最北端が北緯83度に位置します。グリーンランドやノルウェー・スピッツベルゲン島に並ぶ世界最北の島の一つで、夏に雪が解ける露岩域には100種以上の維管束植物が生息しています。しかし、それらに病気を引き起こす真菌類の研究はほとんど行われていませんでした。


 本研究では、島の優占種であるホッキョクヤナギの葉に、特徴的な黒い子実体(真菌類が形成する繁殖器官でいわゆるキノコにあたる)を形成する病原菌を発見しました。分類学的に重視される胞子の大きさや子実体の形などはこれまで発見されたどの近縁種とも異なり、DNA配列も既存の近縁種とは違うことが分かり、新種のRhytisma属菌類として記載しました。


 本研究により、同じ北極域でも地域や宿主の種レベルの違いが、その病原菌の違いをもたらし得ることが明らかになりました。今後、北極やその他の地域から近縁種のデータがさらに集まることにより、Rhytisma属菌が宿主植物と共にどのように北極域に広がっていき、最北の陸地で生きているのかが分かってくることが期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
増本 翔太 助教

掲載論文

【題名】
The northernmost plant pathogenic fungus, Rhytisma arcticum sp. nov.: Morphological and molecular characterization of a novel species from Ellesmere Island, Canada
(世界最北の植物病原菌Rhytisma arcticum sp. nov.:カナダ・エルズミア島からの新種記載)
【掲載誌】
Forest Pathology
【DOI】
10.1111/efp.12818

関連リンク

生命環境系

創基151年筑波大学開学50周年記念事業