生物・環境

クサカゲロウの腸内から新規の酵母を複数種発見

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 クサカゲロウという昆虫の腸内から酵母を分離し、その多様性について、国内で初めて調査しました。その結果、これまで知られていた以上に幅広い種類のクサカゲロウ科昆虫に酵母が生息していたこと、また、それらは主に3種の未記載種で構成されていたことを明らかにしました。

 キノコやカビを含む菌類(真菌類)の中には、菌糸を作らず出芽や分裂によって単細胞で増殖を行う種(酵母)が広く存在します。酵母は単細胞で増殖するため、養分を含んだ液体環境に適しており、樹液や花蜜、汚泥などから多種多様なものが得られます。昆虫の腸内も酵母の宝庫であり、クサカゲロウ科昆虫においても1970年代から腸内に酵母が生息していることが知られています。しかしながら、3亜科あるクサカゲロウ科全体に普遍的に酵母が存在するのかどうかは不明でした。


 本研究では、長野県の菅平高原および茨城県の筑波大学キャンパスなどでクサカゲロウ科昆虫の成虫を採集し、その腸内から酵母を分離、培養して、分類学的な所属の決定と記載を行いました。採集した計58個体のクサカゲロウは、2亜科6属9種に同定され、その全個体から酵母を分離することができました。DNAの配列情報から、これらはすべてメチニコビア(Metschnikowia)属であり、3系統(clade I, II, III)に分かれることが明らかになりました。このうち、clade Iには1未記載種が含まれていました。また、clade IIは全くの新しい系統であり、形態や生理学的性質から2種に分けられました。clade IIは2亜科のクサカゲロウから得られ、これまで知られていた以上に多様なクサカゲロウ科昆虫に酵母が生息していることが判明しました。以上の結果に基づき、これらの酵母をMetschnikowia属の3新種として記載し、その形状が楽器の琵琶に似ていることから、能や平家物語に登場する三面の琵琶の名器に因んで命名しました。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
出川 洋介 准教授

掲載論文

【題名】
Novel Metschnikowia yeasts from the gut of green lacewing in Japan.
(日本産クサカゲロウ科昆虫腸内から得られた新規Metschnikowia属酵母)
【掲載誌】
Antonie van Leeuwenhoek
【DOI】
10.1007/s10482-023-01887-0

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