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オミクロン株BA.2.86系統の出現は自然発生では説明しにくい

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 2023年夏に出現した新型コロナウイルスのオミクロン株BA.2.86系統の起源を調べたところ、世界中の互いに離れた複数の場所で散発的に検出されていたことが分かりました。また、その遺伝子変異は、ヒトで見られる変異パターンとは異なっており、自然発生では説明が難しいことが示唆されました。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株BA.2.86系統は、同株BA.1系統と同様、その祖先にあたる株からスパイクタンパク質に約30の遺伝子変異が突如出現したことが知られています。BA.1系統は極めて感染力が強く、世界中に一気に感染が広がりましたが、BA.2.86系統は大きな流行はせず、その後、JN.1系統に変異してから、感染が見られるようになりました。

 本研究では、BA.2.86系統の起源を調べたところ、2023年夏の出現当初、世界中の互いに離れた複数の場所で散発的に検出されていたことが分かりました。さらに、その変異スペクトルを解析すると、ヒトの市中感染で見られる変異パターンとも、免疫不全患者における免疫逃避で見られる変異パターンとも大きく異なることが分かりました。ヒトで見られるものとは異なる変異スペクトルは、ヒトから動物に感染し、その動物で変異を繰り返したウイルスが再度ヒトに感染する場合には生じ得ますが、全く同じ変異が世界中の異なる場所で同時に自然に起きるとは考えにくいです。この現象の発生過程を説明するのは非常に困難ですが、実験室においてヒト以外の動物(あるいはその細胞)で継代培養したウイルスのサンプルを世界各地(共同研究先など)に不完全な梱包で発送したことが一つの可能性として考えられます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学システム情報系
掛谷 英紀 准教授

掲載論文

【題名】
Anomalous Spike Mutations and Sporadic Global Detection of the SARS-CoV-2 BA.2.86 Lineage
(SARS-CoV-2 BA.2.86系統の異常なスパイク変異と散発的な世界規模での検出)
【掲載誌】
JMA Journal
【DOI】
10.31662/jmaj.2025-0118

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