生物・環境

食べた獲物が胃に残るティラノサウルス科の全身骨格を世界で初めて発見!

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 胃の内容物が残るゴルゴサウルス(史上最大級の肉食恐竜であるティラノサウルス科)の幼体の全身骨格化石を、カナダの白亜紀後期の地層から発見しました。この幼体は、小さな恐竜を好んで捕食したことが分かり、ティラノサウルス科は成長に伴って食性・採餌様式を変化させたことが裏付けられました。

 ティラノサウルスの仲間(ティラノサウルス科)は、白亜紀後期の後半(約8000万~6600万年前)に陸上生態系の頂点に君臨した大型の肉食恐竜です。彼らは成長するにつれ、機敏でほっそりとした体つきから、がっしりとした体つきへと劇的な変化をしました。このような変化は、成長段階によって捕食対象が変わり、生態的地位が上位へ変遷したことを示唆しています。しかしながら、成体ではトリケラトプスなどの大型植物食恐竜を消費した証拠が見つかっている一方、幼体が何を食べていたのかを示す直接的な証拠はこれまで不明でした。


 本研究では、胃の内容物が残るゴルゴサウルスというティラノサウルス科の幼体化石を発見し、幼体の食性を明らかにしました。ティラノサウルス科で胃の内容物が良好な保存状態で確認されることは世界で初めてのことであり、ティラノサウルス科の幼体の採餌様式を示す直接的な証拠となります。調査したゴルゴサウルスの幼体骨格の腹腔には、シチペスという小型恐竜の幼体の後肢などが2体分残されていました。2体のシチペスは腹腔内での配置や消化の程度が異なることから、別々のタイミングで捕食されたことが分かりました。これは、ティラノサウルス科の幼体が特定の小型恐竜を好んで捕食し、大型植物食恐竜を捕食する成体とは大きく異なる食性だったことを示しています。本研究結果は、ティラノサウルス科は成長するにつれて食性や生態的地位が変化する、という仮説を裏付けるものです。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
田中 康平 助教

北海道大学総合博物館
小林 快次 教授


掲載論文

【題名】
Exceptionally preserved stomach contents of a young tyrannosaurid reveal an ontogenetic dietary shift in an iconic extinct predator.
(胃の内容物が極めて良く保存された若いティラノサウルス科が明らかにする、成長による食性変化)
【掲載誌】
Science Advances
【DOI】
10.1126/sciadv.adi0505

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