生物・環境

温泉水は水の化石? 温泉に含まれる特異成分から超深層水循環の実態を解明

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 水と岩石の相互作用を数値モデル化し、中央日本の温泉水に含まれる非天水成分が、150万年~500万年以上地圏に閉じ込められていた水であること、またその場所が、フィリピン海プレート、太平洋プレート、および特定地域(新潟・南西群馬)の海底堆積物の3カ所であることを明らかにしました。

 温泉水の多くは天から降る雨や雪(天水)を起源としていますが、水分子を構成する水素と酸素の安定同位体組成を調べると、明らかに特異な水が検出されることがあります。本研究では、それらが地圏に長い期間閉じ込められていた水(地圏水)であるとの仮説を立て、水と岩石の相互作用を数値モデル化して同位体進化の軌跡を推定しました。そして、海底深部で掘削された岩石中の水や海底泥火山中の水、あるいは海岸付近の油田に含まれる塩水やプレート沈み込み帯の火山蒸気など、地圏水成分を多く含むと考えられるさまざまな水の同位体組成が、その軌跡上にあることを確認しました。


 さらに、温泉水の同位体データから天水の混入の影響を除去して地圏水成分の本来の同位体組成を復元する手法を新たに提案し、中央日本の39か所の温泉水に適用しました。また、これとは別に、各温泉地の深部における地圏水の同位体組成を上述の数値モデルで計算し、温泉水から復元された値と比較したところ、温泉の分布域によって、フィリピン海プレートまたは太平洋プレートの沈み込みを想定した計算結果と一致するものと、どちらとも一致せず同位体的な進化が弱いものに分けられました。これらの結果に基づいて、三次元的な(深度100km以上の)超深層水循環の構造と時間スケールを明らかにしました。


 本研究成果は、地震や火山噴火の発生における水の関与を明確化するのに役立つと考えられ、予知・予測につながる可能性もあります。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
山中 勤 教授

理工情報生命学術院生命地球科学研究群地球科学学位プログラム
安達 郁哉



掲載論文

【題名】
Isotopic evolutionary track of water due to interaction with rocks and its use for tracing water cycle through the lithosphere.
(岩石との相互作用による水の同位体進化軌跡及びその地圏水循環追跡への応用)
【掲載誌】
Journal of Hydrology
【DOI】
10.1016/j.jhydrol.2023.130589

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