医療・健康

保育器内のアルコール濃度を軽減する有効な対策を提案〜早産児への影響調査から〜

研究イメージ画像 (Image by Iryna Inshyna/Shutterstock)

 エタノールを主成分とするアルコール消毒剤は、病原微生物の殺菌に優れた効果を持ち、感染症対策として広く普及しています。出産予定日より早く出生した早産児は免疫機能が未成熟なため厳重な感染対策が必要であり、さまざまな医療処置やケアにおいてアルコール消毒剤が頻用されます。また、体温調整機能を補うために、温湿度が管理できる閉鎖型保育器(保育器)が用いられます。一方、保育器は、その構造的な特性から、アルコール消毒剤が蒸発して内部にたまりやすいことが指摘されています。


 本研究チームは、保育器内のアルコール滞留の実態や早産児への吸収を明らかにするため、世界で初めて、保育器内の空気中アルコール濃度をリアルタイムで測定することに成功し、早産児の血中アルコール濃度との関連を調査しました。その結果、保育器内の早産児の全血液検体からアルコールが検出されるとともに、保育器内のアルコール濃度は、アルコール消毒剤を用いる医療処置に伴って上昇しました。これを踏まえ、保育器内での揮発アルコールの蒸発を抑制するためのアルコール消毒指針(ABD-PRAC)を策定、導入したところ、保育器内だけでなく、早産児の血中アルコール濃度も低下したことから、早産児が保育器内の空気中エタノールを吸収していることが示唆されると同時に、ABD-PRACによりこれを軽減できることが示されました。


 保育器内の早産児のアルコール吸収による有害な症状の出現はこれまでに報告されていませんが、ABD-PRACは、保育器の機能に影響を及ぼすことなく導入できる簡便で有効な対策となり得ます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学附属病院
藤山 聡 病院講師

筑波大学医学医療系
高田 英俊 教授

国立環境研究所 環境リスク・健康領域
中山 祥嗣 エコチル調査コアセンター次長(兼)曝露動態研究室室長


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