医療・健康

生体外でのヒト造血幹細胞増幅技術を開発〜血液疾患の細胞治療実現に向けて〜

研究イメージ画像 (Image by unoL/Shutterstock)

 造血幹細胞は、赤血球・白血球・血小板といったさまざまな血液細胞へ分化する能力を持っており、難治性血液疾患に対して行われる造血幹細胞移植では、移植後の造血および免疫の再構築において重要な役割を担います。しかし、造血幹細胞は非常に数が少なく、特に臍帯血移植においては、移植のリスクが増したり、ドナー選択が制限される可能性があることから、生体外増幅技術の確立が求められています。


 これまで、生体外での造血幹細胞の維持には、血清アルブミンとサイトカインを組み合わせた培地が不可欠とされてきましたが、実際には、短期間の造血幹細胞維持はできるものの、その増幅作用は限定的でした。


 2019年に日米英独共同研究グループは、ポリビニルアルコール培地にサイトカインを加えると、血清アルブミンを用いずに、長期に安定してマウス造血幹細胞を増幅できることを報告しています。これに基づき、今回、アルブミンとサイトカインを、それぞれ高分子ポリマーと特定の化合物に置き換えた培地を用いて、ヒト造血幹細胞の生体外での長期増幅を可能とする新規の培養技術を開発しました。これにより、臍帯血に含まれるヒト造血幹細胞を1か月間にわたって増幅することができます。さらに、単一細胞RNAシークエンス解析により、既存の培養技術と比較しても、造血幹細胞が選択的に増幅されることが示唆されました。


 今後、この培養技術をヒト造血幹細胞の基礎研究ツールとして提供するとともに、より安全な造血幹細胞移植の実現とドナー不足の解消に向けた臨床応用を目指します。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系/東京大学医科学研究所 幹細胞生物学分野
山﨑 聡 教授/特任准教授

慶應義塾大学医学部 内科学教室(血液)
櫻井 政寿 専任講師


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