生物・環境

福島第一原発電所事故後の森林生態系で 放射性セシウムの自浄作用効果を解明

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 東京電力福島第一原子力発電所事故後13年にわたる森林モニタリング調査により、土壌中の放射性セシウムの下方移行という自然のプロセスが、根による放射性セシウム吸収量や空間線量率を低下させる除染効果を持つことを明らかにしました。

 福島県の浜通り(太平洋沿岸)では東日本大震災や東京電力福島第一原発事故からの復興へ向けた数多くの取り組みが行われています。一部の森林では落葉かきなどの除染が実施されたものの、同地域の森林の大部分は依然として手付かずのままで、除染を望む市民の声が根強く上がっています。同原発事故から13年以上が経過した現在では、これまで実施されてきた除染方法では放射性セシウム(137Cs)の除去効率が悪く、新たな森林除染方策が求められています。

 本研究では、2011年から13年間にわたり、福島県川俣町山木屋地区のスギ林において、落葉落枝層、土壌層及び養分吸収を行うスギの細根(直径0.5 mm以下)の137Cs動態を調査しました。その結果、落葉落枝層から土壌層への下方移行が急速に進み、土壌中137Csは時間とともに増加したにもかかわらず、スギ細根中137Csは2020年ごろより減少したことが明らかになりました。特に、細根が密集する土壌0-2cm深での細根中137Csが著しく低下しており、137Csの下方移行によって細根と137Csの分布がずれたためであると考えられました。

 すなわち、僅か数センチメートルであっても土壌中での137Cs下方移行が進むことで、樹木による137Cs吸収が減少する効果があり、これは森林生態系の自浄作用とみなすことができます。ここで自浄作用とは、自然のプロセスによって放射性核種の濃度が低下することを指す用語です。チェルノブイリ原子力発電所事故後、河川や海洋など主に水域生態系においては、雨水や流入河川水によって137Csが希釈される自浄作用が報告されてきましたが、森林生態系ではほとんど着目されていませんでした。

 今回明らかになった森林生態系の自浄作用効果を評価し、新たな森林除染方策として活用していくことは、停滞している浜通りの林業再開へ向けても貢献することが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系/放射線・アイソトープ地球システム研究センター(CRiES)
高橋 純子 助教

掲載論文

【題名】
Downward migration of 137Cs promotes self-cleaning of forest ecosystem by reducing root uptake of Japanese cedar in Fukushima.
137Csの下方移行は福島のスギの経根吸収減少によって森林生態系の自浄作用を促進する)     
【掲載誌】
Science of the Total Environment
【DOI】
10.1016/j.scitotenv.2024.174010

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