医療・健康

皮膚筋炎の皮疹から病態を予測する ~自己抗体別の症状の特徴を特定~

筑波大学医学医療系臨床医学域皮膚科の沖山奈緒子講師らは、横浜市立大学、金沢大学、中京病院、東京女子医科大学、東京医科歯科大学との多施設共同研究にて、膠原病の一つである皮膚筋炎の指の皮膚症状が、各種の筋炎特異的自己抗体により分類できることを解明しました。

皮膚筋炎は自己免疫疾患である膠原病の一つで、筋肉に炎症を生じ、力が入らなくなったり、紅斑などの皮膚症状が現れる疾患です。近年、いくつかの特異的自己抗体が同定され、抗体ごとに、皮膚症状・筋炎・間質性肺炎・癌の合併率といった臨床像の特徴が、サブグループに分類されることが分かってきていますが、その病態については詳しくわかっていません。

本研究では、皮膚筋炎と診断され、指の皮疹から皮膚生検を行い、また筋炎特異的抗体として、抗ARS抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1γ抗体のいずれかが同定されている74症例の検体を、1)苔癬反応、2)乾癬様皮膚炎、3)湿疹反応、4)血管傷害、の4つのサブグループに分類し、解析しました。その結果、これらのサブグループ毎の皮疹が、病理組織学的にも異なることを詳細に裏付けました。



図 皮膚筋炎皮疹病理解析の筋炎特異抗体別まとめ
抗ARS抗体陽性例では、角化性で、しばしば乾癬や湿疹と誤診される皮疹であることが、病理組織学的にも示唆されます。また、内出血様の暗紅色斑が特徴である抗MDA5抗体は、やはり病理組織でも血管傷害が強く認められました。抗TIF1γ抗体陽性例では、重篤な皮疹がびらん化することがありますが、これは苔癬反応の空胞変性(細胞障害の一種)が引き起こしているものと考えられます。 さらには、I型インターフェロンは、抗MDA5抗体陽性例の病態には関与していると考えられるものの、抗ARS抗体陽性例では関与が見られないことが示唆されました。

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