生物・環境

ダンゴムシは食べた鉱物の構造を体内で作り変えて外骨格にしていた

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 ダンゴムシは、飼育する時に虫かごに石を入れるとよいことが知られています。異なる種類の鉱物を与えて飼育した結果、ダンゴムシは食べた鉱物をそのまま殻にするのではなく、体内で鉱物の構造を作り替えていることを発見しました。生物が鉱物の構造を制御して利用する仕組みの理解につながる成果です。

 甲殻類や貝類など多くの生物は、炭酸カルシウムなどの鉱物を利用して硬い外骨格を形成しています。このように生物が体内で鉱物を作る現象は「生体鉱物化(biomineralization)」と呼ばれ、生物材料科学や進化生物学の分野で重要な研究テーマとなっています。

 ダンゴムシの外骨格(背殻)は、炭酸カルシウム(CaCO3)からできており、外敵から体を守る役割があります。ダンゴムシを飼育する際には、背殻の形成のために虫かごの中に石を入れておくとよいことが知られています。しかし、どのような種類の石が背殻の形成に影響するのかについては、これまで詳しく調べられていませんでした。

 炭酸カルシウムには、同じ化学組成でありながらカルサイト(方解石)やアラゴナイト(あられ石)など結晶構造が異なるものが存在します。本研究では、カルサイト、アラゴナイト、そして炭酸カルシウムを含まない石英をそれぞれ与えて約60日間飼育し、背殻の構造を電子顕微鏡、ラマン分光、放射光X線回折などの方法で詳しく調べました。

 その結果、カルサイトやアラゴナイトを食べたダンゴムシでは背殻の鉱物化が進み、分厚く発達した層状構造が形成されることが分かりました。一方、石英を与えた場合には、背殻の鉱物化が弱く、薄い構造しか形成されませんでした。

 さらに詳しく分析したところ、ダンゴムシの背殻の中には「カルサイト型アモルファス炭酸カルシウム(ACC)」という物質が形成され、最終的に生成される結晶もカルサイトであることが明らかになりました。これは、アラゴナイトを食べた場合でも同じでした。

 これらの結果は、ダンゴムシが食べた鉱物の結晶構造をそのまま利用するのではなく、生体内で炭酸カルシウムの構造を作り替えて背殻を形成していることを示しています。生物が鉱物の構造を自ら制御する仕組みを理解するうえで重要な成果です。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
興野 純 准教授

掲載論文

【題名】
Effects of Mineral Nutrition on the Cuticle Structure of Armadillidium vulgare
(鉱物がオカダンゴムシの背殻構造に及ぼす影響)
【掲載誌】
Journal of Structural Biology
【DOI】
10.1016/j.jsb.2026.108312

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