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ミトコンドリアの機能低下がmRNAワクチン接種による心筋炎を誘導する

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(Image by SrideeStudio/Shutterstock)
 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン接種による重篤な副反応として、心筋炎が報告されています。その原因として、ミトコンドリア機能が低下した状態では、ワクチン接種により活性酸素が産生され、心筋において炎症性細胞死が誘導されて心機能低下につながることを明らかにしました。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは高い有効性を持つ一方で、若年男性を中心に、重篤な心筋炎をまれに引き起こすことが報告されています。しかし、その発症メカニズムは十分に解明されていませんでした。

 本研究では、ワクチン接種後に心筋炎を発症した患者の心筋組織を解析し、ミトコンドリアの形態異常とミトコンドリア関連遺伝子が低下していることを見いだしました。さらに、ミトコンドリア機能に軽度の異常を持つマウスモデルにmRNAワクチンを接種したところ、顕著な心機能の低下と炎症が誘導されることが分かりました。

 そのメカニズムとして、mRNAワクチンに含まれる人工脂質がミトコンドリア由来の活性酸素を増加させ、ネクロプトーシスと呼ばれる炎症性細胞死を引き起こすことが明らかになりました。また、ミトコンドリア特異的抗酸化剤や細胞死阻害剤により、mRNAワクチン接種による心筋炎が抑制されることを確認しました。さらに、女性ホルモンによる細胞内シグナルを活性化する薬剤が心機能低下を予防することが分かり、心筋炎発症における性差の一因を説明できる可能性も示されました。

 本研究結果は、ミトコンドリアの状態がmRNAワクチン接種後の心筋炎リスクを規定していることを示唆しています。この知見をリスク評価指標の確立や予防薬の開発につなげることで、mRNAワクチンの安全性向上への貢献が期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
川口 敦史 教授

掲載論文

【題名】
Mitochondrial vulnerability underlies myocarditis from COVID-19 mRNA vaccine.
(ミトコンドリアの脆弱性が引き起こすCOVID-19 mRNAワクチン後の心筋炎)
【掲載誌】
Nature Communications
【DOI】
10.1038/s41467-026-71295-1

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