医療・健康

ダニによるアトピー性皮膚炎を抑制する分子の発見

筑波大学 生存ダイナミクス研究センター 渋谷彰教授と医学医療系 金丸和正助教らは、産業技術総合研究所 舘野浩章上級主任研究員と共同で、ダニが引き起こすアトピー性皮膚炎を抑制する分子を世界で初めて発見しました。

アトピー性皮膚炎を含めた通年性アレルギー性疾患の原因として、ダニがおよそ8割を占めるとされていますが、ダニによるアトピー性皮膚炎の発症のメカニズムは不明の点も多く、また従来の薬剤では効果がない難治性患者も数多くいます。本研究では、ダニによるアトピー性皮膚炎を自然発症するNC/Ngaと呼ばれるマウスのゲノム遺伝子を解析し、7万個余りの遺伝子変異を見出しました。さらに、その中から皮膚のマクロファージに発現するClec10a(ヒトではAsgr1)という遺伝子の変異が、ダニによるアトピー性皮膚炎の原因遺伝子であることを突き止めました。そこで、Clec10aを欠損するマウスを解析したところ、このマウスは、野生型マウスと比べて、ダニによるアトピー性皮膚炎が発症しやすいことから、Clec10aがダニによるアトピー性皮膚炎を抑制することが明らかになりました。驚くべきことに、ダニの成分には、アトピー性皮膚炎を誘導する分子の他に、Clec10aと結合するムチン様分子が含まれており、これをダニから抽出し、アトピー性皮膚炎に直接塗布すると、症状が軽快することがわかりました。



図 野生型マウス(WT)では、ダニの成分であるLPS(エンドトキシン)が皮膚のマクロファージを刺激し、アトピー性皮膚炎を誘導するのに対し、別のダニの成分であるムチン様分子がClec10a(Asgr1)を介して、これを抑制している(左)。NC/NgaマウスやClec10遺伝子欠損マウス(Clec10a-/-)では、Clec10aの発現がないために、LPSの刺激に対する抑制が効かず、アトピー性皮膚炎の症状が強く起きる(右)。

関連リンク

筑波大学生存ダイナミクス研究センター(TARA)

PDF資料

プレスリリース