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血液中のインターロイキン17A過剰は脳のミクログリア活性を低下させる~ASDなど精神・神経系疾患治療への道標~

研究イメージ画像 (Image by Juan Gaertner/Shutterstock)

精神・神経系疾患の発症や病態に免疫系が重要な役割を果たしていることが分かってきました。特にヘルパーT細胞17(Th17細胞)による免疫反応は、自閉スペクトラム症(ASD)や統合失調症、うつ病などの病態に関与することが多くの臨床研究から示唆されています。これらの患者の中枢神経系ではニューロンの配列・層構造の異常やシナプスの密度・形態の変化などが認められ、機能異常の基盤となっていると考えられますが、Th17細胞がどのように寄与しているかの理解は進んでいません。


Th17細胞は腸の粘膜に多く存在し、インターロイキン(interleukin; IL-)IL-17A産生細胞として同定されました。ASD患者では血中IL-17A濃度が上昇しており、IL-17Aレベルと重症度が相関することが報告されています。ASDは、コミュニケーションが上手くできず、興味や活動が偏るなどの特徴を持つ発達障害で、認知脳機能障害を伴います。本研究では、血液中のIL-17A濃度が慢性的に高いモデルマウスを作製し、中枢神経系の変化と行動への影響を解析しました。


脳には血液脳関門というバリアがあり、血液中の異物が脳内に入ることを防いでいます。血液脳関門を構成する細胞(アストロサイト)は血管と神経細胞の間にあり、中枢神経系に入る分子を監視する役割があります。このため、アストロサイトがIL-17Aの濃度変化を検知し、活性化するのではないかと推測し、研究を進めました。そして、脳の中でも記憶の形成に重要な海馬に注目して解析を行いました。その結果、当初の仮説に反し、モデルマウスの海馬アストロサイトの密度や形態には大きな変化は認めらませんでした。一方、海馬の歯状回と呼ばれる部位の脳内免疫細胞(ミクログリア)の密度が顕著に減少し、その活性も低下していることを見出しました。


本研究で、免疫分子IL-17Aが精神・神経系疾患における中枢神経系の器質的異常を引き起こすメカニズムの一端が明らかになりました。ミクログリアを標的とした治療薬の開発や、自己免疫疾患治療薬として確立しているIL-17A抗体などの精神・神経系疾患予防および治療への応用が期待されます。


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研究代表者

筑波大学 医学医療系
佐々木哲也 助教
武井 陽介 教授

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