医療・健康

慢性腎臓病患者への生活食事指導は費用対効果に優れる 〜慢性腎臓病重症化予防のための戦略研究の結果から〜

研究イメージ画像 (Image by krumanop/Shutterstock)

慢性腎臓病は、たんぱく尿の存在や腎臓の機能低下などが3か月以上続く状態を指します。慢性腎臓病が進行すると末期腎不全となり、透析療法が必要となります。透析療法には1人当たり年間約500万円の医療費がかかり、社会的にも負担となっています。このため慢性腎臓病を早く発見し、適切な治療を行うことが重要です。


2006年に始まった慢性腎臓病重症化予防のための戦略研究(FROM-J研究:研究代表者 山縣邦弘筑波大教授)では、かかりつけ医、腎臓専門医、コメディカル(看護師、栄養士など医師以外の医療従事者)の協力による医療システムの有効性、有用性を検証してきました。最初の3年半で、軽症例の慢性腎臓病患者への生活食事指導を含む診療支援は、腎機能悪化抑制に有効なことが明らかとなりました。このFROM-J研究は継続中(FROM-J10)で、現在は10年後の予後調査が行われています。


本研究では、FROM-J研究の結果に基づき、かかりつけ医と腎臓専門医の診療連携を強化する介入を行った場合の費用と効果を分析しました。その結果、増分費用効果比は質調整生存年(QALY)当たり14万5593円と評価されました。増分費用効果比とは1QALY、すなわち国民1人の健康寿命を1年延ばすために追加的に社会全体で支払う費用のことです。日本の評価基準の閾値となっている500万円(1人当たりの透析医療費と同じ額)と比較すると、極めて小さい値でした。


本研究により、かかりつけ医と腎臓専門医の診療連携を強化し、慢性腎臓病患者への生活食事指導を普及させることは、患者が透析療法に陥ることを予防するばかりか、将来の医療保障費軽減に繋がる望ましい政策決定であることが明らかとなりました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系保健医療政策学・医療経済学
大久保 麗子 助教
近藤 正英 教授

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