医療・健康

皮膚筋炎の自己免疫機構を再現するモデルマウスを新規開発

研究イメージ画像 (Image by Vitalii Vodolazskyi/Shutterstock)


膠原病の一つである炎症性筋疾患の皮膚筋炎については、患者の血清から、いくつかの種類の自己抗体が同定され、それに応じて、合併症の有無や治療反応性などが予測できることが分かってきました。一方、これらの自己抗体の種類に対応したモデル動物が存在しないため、基礎的な病態の解明や適切な治療方法の開発は遅れています。本研究では、患者から同定された筋炎特異的自己抗原の一つであるtranscriptional intermediary factor 1γ(TIF1γ)に対する自己免疫機構を再現する、実験的筋炎モデルマウスを新たに開発することに成功しました。


皮膚筋炎の患者からは、複数の筋炎特異的自己抗体が検出されますが、これまで、これらの抗体が「筋炎の結果なのか原因なのか」「自己抗体そのものが病気を起こしているのか」は不明でした。本研究で開発したモデルマウスを用いて、筋炎特異的自己抗体が対象としている自己抗原TIF1γに対する自己免疫機構のうち、まず誘導される特異的T細胞が筋炎を引き起こすこと、また、これに続いて産生される特異的抗体そのものは、筋炎の発症とは関わっていないことが明らかになりました。


抗TIF1γ抗体陽性の皮膚筋炎患者は、小児であれば筋力低下が顕著であること、成人であれば内臓悪性腫瘍を合併していることが知られていますが、現状の治療としては、非特異的免疫抑制療法しか存在しません。本研究で確立したモデルマウスは、患者の体内で起こっている自己免疫機構を忠実に模しており、より効果的で、かつ悪性腫瘍治療の邪魔をしない、筋炎治療法の開発に貢献することが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
沖山 奈緒子 講師

大阪大学大学院医学系研究科
藤本 学 教授
創基151年筑波大学開学50周年記念事業