医療・健康

骨修復において幹細胞が働くメカニズムを解明

研究イメージ画像 (Image by Praisaeng/Shutterstock)


 間葉系幹細胞(MSCs)は、骨髄、脂肪細胞、歯髄などに存在しており、骨、軟骨、脂肪組織などの細胞に分化する組織幹細胞の一つです。その多分化能や組織再生能から、再生医療のツールとして注目されていますが、MSCsの生体内での動態や分化能については未だ不明な点が多く、治療の有効性や作用機序が不明確なまま、臨床応用が先行しているケースもあります。より安全で効果的な再生医療の実現のためには、組織修復・再生における生体内でのMSCsの動態の解明が望まれています。


 本研究グループは、これまでに、MSCsに強く発現する酵素分子CD73に着目し、CD73発現細胞を蛍光標識したマウスを作製しています。今回さらに、骨髄中で幹細胞を維持する微小環境(ニッチ)が再構築される際のメカニズムを明らかにしました。


 このマウスからCD73陽性MSCsとCD73陰性MSCsを単離し、性質を比較したところ、CD73陽性MSCsは、生体外において高い増殖能と骨・軟骨細胞への分化能を持つことが分かりました。また、マウス大腿部に骨折を作製し、骨修復におけるCD73陽性MSCsの動態解析より、CD73陽性MSCsは骨折部位に遊走し、骨芽細胞や軟骨細胞に分化し、積極的に組織修復に関わっていることが判明しました。一方、CD73陽性血管内皮細胞は、骨修復中期に骨折部位に観察され、周囲には造血幹前駆細胞が集積し、ニッチの再構築に働いていました。以上のことから、CD73発現細胞はニッチの再構築に重要な役割を示すことが明らかとなりました。


 本研究成果は、CD73陽性MSCsを標的とした骨疾患への新たな治療法の開発につながると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生存ダイナミクス研究センター
木村 健一 助教

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