医療・健康

脳梗塞による神経障害を軽減する標的分子の発見

研究イメージ画像 (Image by Radiological imaging/Shutterstock)


 脳卒中による死亡は全死因の中で3番目であり、このうち脳血管閉塞による脳梗塞による死亡は、毎年6万人を超えています。脳梗塞においては、神経細胞等の脳細胞が死滅し、麻痺等を含む様々な神経症状を発症します。また、生じた死細胞は、その周囲に炎症を引き起こし、これが神経細胞死を拡大して、さらに重篤な神経障害を引き起こすだけでなく、生命の危険をももたらします。従って、この死細胞を早期に除去することができれば、このような影響を最小限に食い止めることができると考えられます。


 本研究では、死細胞を貪食して除去するマクロファージの細胞膜上に発現する免疫受容体分子CD300aが、死細胞が有するリン脂質フォスファチジルセリンと結合し、マクロファージによる死細胞の貪食を抑制することを発見しました。一方、CD300a遺伝子欠損マクロファージでは、野生型マクロファージに比べて、死細胞の貪食が進み、それに伴って、マウスの脳梗塞モデルで神経障害が顕著に軽減することを見いだしました。さらに、CD300aとフォスファチジルセリンとの結合を阻害する抗CD300a抗体の投与によって、脳梗塞病態が著しく改善することを明らかにしました。


 本研究成果は、脳梗塞の克服と健康長寿社会の実現へ向けた大きな一歩になるものと期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
澁谷 彰 教授

TNAX Biopharma株式会社
阿部 史枝 研究開発部 アソシエイト リサーチ サイエンティスト

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