医療・健康

【Nature Index Selection】がん細胞の増殖を抑制する免疫分⼦を発⾒(Research highlights 2022年3月)

シュプリンガー・ネイチャーが運営するデータベースサイトNature Indexでは、毎月、主要な82ジャーナルの中から、本学所属の研究者による研究論文1報を、Research highlightsとして選出しています。2022年3月は、本件が紹介されました。
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研究イメージ画像 (Image by Juan Gaertner/Shutterstock)


 我が国において、がんは⻑らく死因のトップを占めており、その克服は依然として⼤きな課題です。近年、がんの免疫療法が注⽬されていますが、がんの周囲に集まってくる免疫細胞(樹状細胞)の中には、がんを攻撃するものがある⼀⽅、その活性を抑えて、がんの増殖を促進するものもあることが分かってきました。そのような免疫細胞としては、制御性T細胞が知られていますが、がん周囲にある制御性T細胞の活性がどのように制御されているかは、明らかになっていませんでした。


 本研究では、マウスのがんモデルを⽤いて、がん細胞から分泌される細胞外⼩胞と呼ばれる粒⼦が、がん細胞周囲に集まってきた免疫細胞に取り込まれ、がん細胞の増殖を抑制することを発⾒しました。すなわち、樹状細胞に取り込まれた細胞外⼩胞は、樹状細胞に発現する免疫受容体分⼦CD300aと結合し、免疫調節に関与するインターフェロンベータの樹状細胞からの産⽣を減少させ、これが制御性T細胞の活性を抑制し、がん細胞の増殖を抑制します。⼀⽅、樹状細胞のCD300aを⽋損したマウスでは、インターフェロンベータの産⽣が増加し、制御性T 細胞の活性が亢進し、がん細胞の増殖が促進されました。また、ヒトの⽪膚がんである悪性⿊⾊腫の患者において、CD300Aの発現が⾼い患者の⽣存期間は、CD300Aの発現が低い患者と⽐べて、有意に⻑いことを突き⽌めました。


 本研究により、樹状細胞のCD300aが、がんの増殖を阻害するメカニズムが明らかになりました。この研究成果は、がんの克服に向けた⼤きな⼀歩になるものと期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波⼤学医学医療系
澁⾕ 彰 教授

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