医療・健康

起きていた時間を測る神経細胞の発見〜寝ないと眠くなる仕組みの解明へ〜

研究イメージ画像 (Image by Drawlab19/Shutterstock)

 本研究グループはこれまでに、線虫という単純な体の構造をした生物の睡眠と、哺乳類の睡眠を制御している遺伝子が共通していることを示してきました。今回、この線虫を用いて、「どうして寝ないと眠くなるのか」という問題の解明に取り組み、起きていた時間を計測するタイマーのような役割を果たす神経細胞を発見しました。


 まず、線虫が起きたり寝たりを繰り返しているときに、線虫の頭部に存在する神経細胞がどのように活動しているかを調べました。その結果、ALAという神経細胞の活動が、起きている間にはだんだんと高まり、睡眠に入ると低くなることを発見しました。また、ALAの活動を操作する実験から、ALAの活動が高まると、起きている状態から寝ている状態への切り替えが誘導されることを明らかにしました。さらに、ALAが睡眠を制御するにはceh-17という遺伝子が重要であることも分かりました。この遺伝子は哺乳類にも保存されています。


 今後、ALAが起きていた時間を測る仕組みについて、ceh-17に着目して、詳しい分子機構を解明する予定です。また、ceh-17を中心とした分子ネットワークが、ヒトの眠気の制御にも関与するかを明らかにしていきます。眠気の実体をより深く理解することは、根本的な治療法のない睡眠障害や、睡眠不足に起因する精神神経疾患に対する治療・改善方法の開発につながると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 (WPI-IIIS)
林 悠 客員教授

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国際統合睡眠医科学研究機構 (WPI-IIIS)


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