医療・健康

デジタル描画解析による原因疾患が異なる認知症の鑑別診断支援ツールを開発

研究イメージ画像 (Image by Photoimpuls/Shutterstock)

 認知症には原因となる疾患によっていくつかの種類があり、それぞれ異なるケアを必要とするため、早期の鑑別診断が非常に重要です。しかしながら、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症には臨床症状に多くの類似点があり、鑑別は容易ではありません。また、鑑別診断に有効とされるバイオマーカー検査は高額で身体的侵襲性を伴うため、安価で非侵襲な診断支援ツールが必要とされています。


 本研究では、文字や図形を描画する際の動作を解析することで、これら2つの認知症疾患の鑑別を支援するツールを開発しました。まず、市販のタブレットを用い、アルツハイマー型認知症例、レビ―小体型認知症例、健常例の3群から、文章を書く、図形を模写するといった5つのタスク中の描画データを取得しました。このデータをもとに、描画速度、筆圧、静止時間の観点で描画動作を解析した結果、2つの認知症疾患が全く異なる傾向を示すことが分かりました。また、機械学習技術による分類モデルを検証し、複数の描画タスクを組み合わせた解析により3群を高精度で分類できることに加え、各群間の分類において、決め手となる描画タスクがそれぞれ異なっていることを示しました。


 本研究は、デジタル描画解析技術をレビー小体型認知症のスクリーニングおよび鑑別支援に応用した世界初の試みであり、複数の異なる描画タスクを効果的に組み合わせることで、認知症疾患の検出と鑑別の両方が達成できることを示しました。簡便なスクリーニングツールとして、原因疾患に応じた認知症の早期診断・早期介入の一助となることが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
新井 哲明 教授

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