医療・健康

アトピー性皮膚炎患者に特徴的なダニ特異的T細胞の免疫バランスを解明

研究イメージ画像 (Image by onstockphoto/Shutterstock)

 アトピー性皮膚炎は、成人のおそよ2~5%が罹患している最も一般的な慢性皮膚疾患ですが、その病態において、制御性T細胞(Treg)の数や機能については未解明な点があります。近年、アトピー性皮膚炎患者においてTregが健常者より多いという研究結果が散見されますが、アレルギーを制御する方向に働くTregが多いにも関わらず、アトピー症状を呈するという事実は逆説的です。本研究では、この逆説的課題を解明するために、アトピー性皮膚炎の代表的アレルゲンであるダニ抗原に特異的なT細胞の解析を行いました。


 その結果、これまでの報告と同様、アトピー性皮膚炎の患者群は健常対照群に比べTregの総数は多い傾向にありました。しかし、ダニ単一抗原に特異的なT細胞に着目して解析をすると、健常対照群に比べてアトピー性皮膚炎の患者群では、アトピー症状を引き起こす方向に働くダニ特異的エフェクターT細胞の割合が、ダニ特異的Tregの割合より多い傾向にあることが分かりました。さらに、患者群のダニ抗原特異的エフェクターT細胞は、アトピー性皮膚炎の病態の中心的役割を担う炎症性サイトカインであるIL-4およびIL-13を、健常対照群より多く産生していました。患者群と健常対照群でダニ特異的Tregの免疫抑制機能に差は認められませんでした。


 以上の結果から、アトピー性皮膚炎患者において、抑制性のダニ特異的Tregに対して向炎症性のダニ特異的エフェクターT細胞が数的に優位に存在することが、アトピー性皮膚炎患者がダニに対して免疫寛容に至らず、アトピー症状を呈する要因であると考えられました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
高田 英俊 教授

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野
沖山 奈緒子 教授

掲載論文

【題名】
Antigen-specific T cell balance reveals why patients with atopic dermatitis fail to achieve immune tolerance.
(抗原特異的T細胞のバランスがアトピー性皮膚炎患者がなぜ免疫寛容を獲得できないかを明らかにする)
【掲載誌】
Clinical Immunology
【DOI】
10.1016/j.clim.2023.109649

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