医療・健康

視床下部の腹外側視索前野が覚醒を誘導することを発見

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 脳の深部にあり、恒常性の維持に必要な部分に視床下部という部分があります。その視床下部の中の一領域である視索前野(POA)と視床下部外側野(LHA)は、前者が睡眠、後者が覚醒を制御する役割を持っています。POAの腹外側視索前野(VLPO)にあるγ-アミノ酪酸(GABA)およびガラニン(GAL)産生ニューロン(VLPOGABAおよびVLPOGALニューロン)は、睡眠を維持するために作用しており、一方、LHAには覚醒を維持するために重要なオレキシン産生ニューロン(オレキシンニューロン)が存在します。


 本研究では、マウスを用いて、VLPOGABAおよびVLPOGALニューロンが、LHAのオレキシンニューロンと直接シナプス結合することを明らかにしました。さらに、LHAに投射するVLPOGABAおよびVLPOGALニューロンに接続しており、これらを制御すると考えられるニューロン群は、とりわけ視索前野とLHAに多く観察されました。また、VLPOGABAニューロンとLHAをつなぐ神経回路のみを人工的に興奮させると、従来考えられていた睡眠ではなく、覚醒が誘導されることが明らかになりました。本研究により、睡眠と覚醒の制御におけるVLPOとLHAの結合の役割が解明され、VLPOとLHAをつなぐ神経回路のこれまで知られていなかった覚醒を制御する機能が明らかになりました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系/国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
櫻井 武 教授
平野 有沙 助教

掲載論文

【題名】
Structure and Function of Neuronal Circuits linking Ventrolateral Preoptic Nucleus and Lateral Hypothalamic Area.
(視床下部腹外側視索前核と外側野を繋ぐ神経回路の構造および機能の解明)
【掲載誌】
The Journal of Neuroscience
【DOI】
10.1523/JNEUROSCI.1913-22.2023

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医学医療系
国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)

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